雑感 | ・サービスの原点 |
− サービスの原点 − |
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2つの大きな会社のトップが交代します。ソニーは、ソニー米国法人社長のハワード・ストリンガー氏(63)が副会長兼最高執行責任者(COO)に就任し、ダイエーは、高校卒業後、勤務先での事務職に飽き足らず、ホンダの販売会社に転職し、その後もBMW、フォルクスワーゲン(VW)の販売会社を育て上げた林文子氏(58)が、会長兼最高経営責任者(CEO)に就任します。 ソニーは、ライバルの松下電器産業が2004年度通期の業績見通しを上方修正するなかで、大幅な下方修正を余儀なくされ、上述の通りトップ交代を発表しました。 元ソニー取締役の黒木靖夫氏は、ソニーの業績不振を、「経営陣がものづくりを軽視したツケ」とみ、「映画など元来経営ノウハウを持っていなかった事業への多角化に奔走し、規模の拡大に走るあまり、ソニーらしいものづくりを重視し続けていくという姿勢をトップが明確に示せなかった」結果であると述べています(日経)。 ソニー製品だったら他社より多少価格が高くても買うという「ソニープレミアム」が消滅しつつあるばかりか、ソニーは特に液晶テレビ受像機、PDPテレビ受像機(ププラズマテレビ受像機)、DVDレコーダー、デジタルカメラ等で他社に出遅れ、例えば、液晶パネルでは、松下電器産業に製品化で約3年、投資で5年出遅れたと言われます(日経)。 ストリンガー氏は、TV(テレビ)インタビューの中で、「ソニーは今や、商品主義ではなく、経営第一主義そして官僚主義に陥(おちい)っている」と語りました。また「すべてでナンバー・ワンになれるものではない。何をつくるか商品の選択が必要である」とも述べていました。 一方、合計1兆円の金融支援を受けても再建できなかったダイエーは、産業再生機構に、スポンサーの丸紅・アドバンテッジパートナーズを加えた新体制で再建へのスタートを切ることになりました。 現在、「ダッシュ80」という再建プロジェクトチームが作られ、課題の洗い出しが行われていますが、「ダイエーは、当たり前のことが当たり前にできない組織」になっているようです(クローズアップ現代)。 アンケート結果によると、ダイエーの商品は、野菜や肉・魚などの生鮮食料品で特に人気が良くないようです。最近野菜は、八百屋さんだけでなくスーパーマーケットでも、近くの農家から新鮮なものを産地直送で仕入れて店に並べるのが常識になっていますが、東京にある仕入本部が一括大量仕入れして全国の店舗に配送するシステムが足かせとなって、ダイエーではそれができないらしいです(同上)。 店舗へ品物(野菜)が届くのが、産地直送の場合と比べて約24時間遅れるのだそうです(同上)。それだけ鮮度が落ちます。大量仕入れによってコストダウンを図るというダイエーの経営システムは、「生鮮食料をできるだけ新鮮なうちにお客さんに届ける」というサービスの原点をないがしろにしているわけです。これも「商品主義ではなく経営第一主義」と言う、ソニーのストリンガー氏の言葉に通ずるものがあります。 一時期、斜陽産業と言われていた映画業界が最近活況を呈し、興行収入が伸びているようです。邦画にも人気があるようですし、自主制作・自主上映の映画もたくさん作られているようです。 民放のテレビは、コマーシャルを見てもらわないことには営業になりません。だから、視聴率という物差しは大事でしょう。しかし、視聴率第一主義の結果、TV番組は、面白く、可笑しくのバラエティ番組が席捲(せっけん)し、見ごたえのあるドラマは皆無と言えるほどです。そのことが、人々の足を映画館へ運ばせる一因になっているようです。 「将来、テレビが主流か、インターネットが主流か」の論争がいま盛んに行われています。別に、ホリエモンの肩を持つわけではないですが、テレビで何を提供するのか、商品のことを忘れて経営第一主義でいるとテレビもいつの間にか足元をすくわれるということになりはしないでしょうか。ニュースとスポーツ、ドキュメンタリー番組を見る以外は、テレビの前にいるよりパソコンと向き合っている時間の方が圧倒的に多い著者であります。 サービスの原点は商品であり、そのサービスを提供する企業の原点はそこに働く一人一人の人間だと思います。経営第一主義の企業買収劇に奔走するあまり、そのことがないがしろにされることにならないでしょうか。 一庶民にとって、大企業の経営は、巨塔のはるか雲上の出来事に違いありませんが、2つの大企業のトップ交代劇から見えてくるものは、その雲上の出来事とて消費動向の流れを無視できないということです。 消費動向の流れを決めているのは私たち庶民一人一人です。私たち一人一人が、消費者としての、視聴者としてのしっかりしたスタンス(物事に取り組む心や考え方の姿勢、身構え)を持つことが肝要であると思われます。 【備考】 このレポートは、下記を参考にして書きました。 ◆日経ものづくり(2005年3号)「ソニー業績不振の理由とものづくり力の検証」 ◆筑紫哲也NEW23(3月31日放送)「ソニーの次期トップがTV初出演」 ◆NHKクローズアップ現代(3月31日放送)「ダイエー再建 最後の挑戦」 |
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2005.04.06 | ||||
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