コラム | ・さるぼぼ |
− さるぼぼ −
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飛騨高山の街を歩くと、あちこちの土産物店に『さるぼぼ』と呼ばれる赤い人形が吊るされているのが目につきます。飛騨地方で昔から作られてきた民芸人形で、赤い体に赤い真ん丸の顔、先が尖(とが)った太い人参ような手足に、大きく『飛騨』と書かれた金太郎腹掛けをかけて、座った格好で足を前に投げ出しています。 『ぼぼ』とは、飛騨地方の言葉で赤ちゃんのことです。したがって、『さるぼぼ』は、猿の赤ちゃんの意味で、子供たちの遊戯玩具として、また、災いが去る(猿)や家内円(猿)満などの意味を含ませ、お守り人形として作られてきました。 田植えの農繁期になると農家は家族総出の田植えでした。飛騨地方の農家も例外ではなく、生まれたばかりの赤ちゃんのいる家では、赤ちゃんを連れ出して田植えをしなければなりませんでした。 ある日、田んぼの畦道に置いた籠(かご)に赤ちゃんを入れて田植えをしていると、赤ちゃんが田んぼのなかに落ちそうになります。山から下りてきて田植えの様子を見ていた一匹の猿がそれに気づき、赤ちゃんを助けたのだそうです。 農家の人は、猿に感謝して、使い古しの腰巻で猿の赤ちゃんの人形を作ってお守りにしました。それが『さるぼぼ』の始まりだそうです。白川郷へ向う濃飛バスの定期観光バスのなかでバスガイドさんが話してくれた話しですが、史実はともかくとして、何ともほほえましい話しではないでしょうか。 会津の赤べこなどもそうですが、郷土玩具に赤物が多いのは、赤色が疫病除けの色だと考えられていたからです。飛騨地方では、子供や孫ができると、かあちゃんやばあちゃんが、暇な冬の時期にコツコツと作って子供や孫に与えました。遊び道具であると同時に、天然痘などの疫病除けまじないの人形でした。 ところで、『さるぼぼ』は顔がのっぺらなので、一瞬ギョッとします。なぜ目鼻や口が無いのでしょうか。人形の顔は、目や口や鼻のちょっとした違いで表情がまるっきり違ってくるので、人形絵師ならともかく、農家のかあちゃんやばあちゃんにとって顔を描くのは難しいことだったのかも知れませんし、本来が耳や手足の指も省かれた抽象人形だったからかも知れません。 下記のページで、『さるぼぼ』の写真が見れますのでご覧下さい。 ・飛騨地方の民芸人形『さるぼぼ』 → http://washimo-web.jp/Information/sarubobo.htm |
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2008.02.27 | ||||
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