コラム  ・ポインセチア   
− ポインセチア −
初冬の頃、茎先の包葉が鮮紅色に染まって美しいポインセチアは、クリスマスや歳末のショーウィンドウの飾りに欠かせない観葉植物です。中央アメリカ、メキシコ原産の常緑低木で、ポインセチアという名前はアメリカ合衆国の初代メキシコ公使であったJ・R・ポインセットという人の名に由来するそうです。
   
1825年に初代駐メキシコ公使として任命を受けたポインセットは、メキシコ駐在時代、南部の街タスコを訪れ、冬場に赤い葉を咲かせるトウダイグサ科の植物を発見します。アメリカに持ち帰って広めると、やがて、クリスマス時期に咲く赤い花として、爆発的に全世界に普及し、クリスマスにキリストの血の色である赤を飾る習慣があったことから、クリスマスに飾られるようになりました。
   
    ポインセチア神父に午後の憩あり    藤岡晴丘
    ポインセチアや聖書は黒き表紙かな   三宅絹子
  
今では、クリスマスの時期にあわせて短日処理(人工的に長い暗期を与える)をして、鉢植えで出荷されています。俳句に詠まれるのも鉢植えのポインセチアです。
  
    待ち侘びしポインセチアに染まるほど  山田弘子
    寝化粧の鏡にポインセチア炎ゆ     小路智壽子
    夜の部屋ポインセチアが赫すぎる    千坂美津恵
  
ポインセチアは冬の季語。季語が6文字だと、俳句はなおさら詠むのが難しいです。あれこれひねってみても浮かんできません。イメージするのは、やはり鉢植えのポインセチアです。ですから、身の丈ほどの、あるいは屋根よりたか〜いポインセチアの姿など、すっかり頭の中から飛んでしまっていたのでした。
  
昨年(2008年)の暮れ、喜界島、奄美大島、徳之島を訪れました。灌木林では自生の、民家では玄関や庭先に植えられた細い草木が、あちこちで、天に向かって背高く伸び、そのてっぺんに鮮やかな赤色の葉をつけています。
  
大島海峡を隔てて、奄美大島の南岸と向かい合った島、加計呂麻島(かけろまじま)の民家の庭先で、ついに『何という名前の花ですか?』と尋ねてしまったのです。すぐさま、『ポインセチアです』という返事が返ってきました。言われてみれば、明らかにポインセチアです。だから、『あ!、そうですね』と一瞬戸惑った曖昧な返答。バラのように見える珍しいポインセチアもありますよ言って、案内してもらいました。よく見ると、包葉がくるまっていて、なるほどバラの花のように見えます。
  
 ・奄美地方のポインセチアの写真を見る
   
加計呂麻島は、特攻艇震洋基地跡と、『死の棘(とげ)』『出発は遂に訪れず』などの小説で知られる島尾敏雄の文学碑のある島です。島の東端には、太平洋戦争中に旧日本海軍が泊地だった大島海峡を防衛するための施設だった安脚場(あんきゃば)の戦跡があります。
  
    島を死守ポインセチアを天の花  浦野芳南
  
クリスマスが過ぎ1月頃になっても、奄美地方のポインセチアは、真っ青な空の中で、のびのびと鮮紅色の葉を咲かせています。クリスマスの時期、都会のショーウィンドウに飾られていた鉢植えのポインセチアは、今頃どうなっているのだろうなどと考えてみるのです。
 
【参考にしたサイト】
[1]ジョエル・ロバーツ・ポインセット - ウィキペディア
[2]クリスマスのポインセチア
 
 

2009.01.14
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