コラム  ・落し文   
− 落し文 −
信州霧ヶ峰に出かけたり、カラオケ教室の年に一度の発表会があったりして、家のことがすっかりおろそかになっていたので、先日の土曜日と日曜日は、もっぱら庭や菜園の草抜き、田畑の土手の草払いなどに専念して過ごした休日でした。
 
専念といっても夏、昼間の野良仕事は耐えられないので、午前中は早朝から10時頃まで、午後は4時頃からの作業になります。日曜日の朝、庭掃除をしていると、嬉しいことに『落し文』(おとしぶみ)を見つけました。
 
落し文とは、江戸時代、恋文などを相手にひそかに渡すために庭などにそっと落としたり、公然とは言えないことを匿名の文書にして路上などに落としたりしたもので、当時は、巻物に書かれていました。
 
    妻ゐれば無言で拾ふ落し文  ワシモ
 
但し、わが家の庭に落ちていたのは、落し文でも夏の季語になっている『落し文』です。オトシブミ科の甲虫は、栗、櫟(クヌギ)、楢(ナラ)などの広葉樹の葉をクルクルと上手に巻いて巣を作り、その中に卵を産みつけて、地上に落します。先ずは、わが家の落し文をご覧下さい。
 
 ・『落し文』の写真を見る
     
この地上に落ちた筒状の巻き葉が、手紙の巻物に似ていることからそう名づけられました。虫の名前まで『オトシブミ』と名づけられているのですから、日本人の風流心には感心させられます。また、鴬や時鳥(ホトトギス)が落したものと見立てて、昔の京都あたりでは、『鴬の落し文』『時鳥の落し文』ともいったようです。
 
    落し文ありころころと吹かれたる   星野立子
    手にしたる女人高野の落し文     清崎敏郎
    西行の道みな細し落し文       鷲谷七菜子
 
庭掃除を中断して、写真を撮ろうと三脚をセットしていると、『何を撮るの?』と妻が近づいてきます。『これ何というか知っている?』と質問すると、『虫でしょう』『・・・』『沢山いたよ』『えっ!どこに?』『ハイビスカスに』『で、どうした?』『薬まいた』。なるほど、わが家の女房殿は現実的であります。
 
さて、その虫ですが、卵から孵化した幼虫は成虫になるまで、落し文の中で過ごします。つまり、落し文は、揺籃(ゆりかご)というわけです。幼虫は揺籃の内部を食べて成長し、幼虫の成育中に中の様子を観察しようと揺籃に小さな穴をあけると、幼虫は糞でふさいでしまうそうですから、おもしろですね。
 
さて、オトシブミって、どんな虫なんでしょう? 詳しく解説しているサイトがあります。
 
『オトシブミの国』

  

2008.07.16
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