雑感  ・'10年頭雑感 〜 日本の農業政策に関心を   
− '10年頭雑感 〜 日本の農業政策に関心を −
1961年(昭和36年)には80%近くあったわが国の食料自給率が、現在、40%という低いレベル(いずれもカロリーベース)まで落ち込み低迷していることは、ご承知の通りです。60%の食料を輸入に頼るという自給率の低さは、国の安全保障のみならず食の安全性へ暗い影を落としています。
  
輸入食品には、農薬やポストハーベスト(収穫後の農産物に使用する殺菌剤、防かび剤などのこと)が残留していたり、遺伝子組み換え作物が使用されているなどといった安全性の問題があります。ギョーザの皮やパッケージの表面などから有機リン系薬物・メタミドホスやジクロルボスが相次いで検出されるという、一昨年(2008年)2月に起きた中国ギョーザ・ショックは記憶に新しいところです。
  
そうした状況の中で日本産の農産物の輸出が近年増加していることをご存知でしょうか。2001年に 2,514億円だった日本の農林水産物・食品の輸出額は、5年後の2006年には5割増しの 3,739億円となっており、政府は2013年までに輸出額を1兆円規模に拡大することを目指しています〔1〕
  
こうした動きには、健康面や安全性から日本産の農産物や日本食に対する世界的な人気の高まりが背景にあるそうです。特に中国やタイなど近隣アジア諸国において経済成長で出現した富裕層が、安全で美味しい高品質の日本産農産物を買い求めるようになっているのです。
  
農産物の輸出で先行したのは青森産のりんごで、台湾を中心に、香港、中国、イギリスへ輸出されています。また、福岡県産のいちごはアメリカ、温州みかんはカナダ、マスクメロンは中東オマーン、その他に香港、韓国、シンガポール、タイなどで人気があるそうです。台湾では、米やりんご、梨、柿などが浸透しており、日本産の長芋が支持されるなど、生鮮野菜の分野にも人気が広がっています[2][3]
  
また、象徴的な案件として、2007年には中国の富裕層に向けたコメの輸出が4年ぶりに再開されました。中国産の20倍以上という高値にも関わらず、輸出量の全部が1ヶ月で売り切れて話題になったそうです。[2][4]
  
日頃、輸入食品や食材に取り囲まれ、安全性を危惧しながら食している食生活事情の中にあって、自国産の農産物が逆に海外の富裕層から安全性を買われ輸出されているという状況はどこか皮肉っぽくありませんか。
  
食料自給率低下の問題は、農村や地方の過疎化、農地や国土の荒廃と大きな関連があります。本メルマガの著者の住む鹿児島県でも高齢化率(総人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合)の上昇が著しいばかりでなく、限界集落(高齢化率が50%以上になり、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になった集落のこと)の出現が問題になりつつあります。
  
農村や地方の過疎化は、農業の再生なしには阻止できないものと思われます。農業が再生され、地方から、中央で働く人たちに安全で美味しい国産農産物をどんどん送り、どんどん食べてもらう。中央の経済活動圏に対して、地方の食料供給圏という役割の棲み分けがバランスよくとれた日本って実現できないのでしょうか。
  
農村(農業)を再生させ、食料自給率を上げたいというのは、どの政党も同じでしょう。民主党は、政策集INDEX2009 に、米、麦、大豆などの販売価格が生産費を下回った場合、農業者戸別に所得補償を実施する制度(農業者戸別所得補償制度)の導入などを盛り込んでいますが[5]、 賛否両論あるようです。その他、農業法人による生産性の向上や株式会社の農業参入の問題など、これからの日本の農業政策に大いに関心を持ちたいです。
  
【参考データ】
主要先進国の食料自給率(1961〜2003)
我が国の農林水産物・食品輸出額の推移(農林水産省HPより)
我が国の農林水産物・食品輸出目標額(農林水産省HPより)
 
【参考にしたサイト】
[1] 農林水産省(3)農産物輸出の一層の促進
[2] パソナオーツー│世界の中の日本の農業
[3] 小川孔輔のウェブサイト 日本農業新聞・連載企画
 (農産物の輸出鼈ブランドニッポン皷の検証)
[4] 日本産農産物輸出促進 とは - コトバンク
[5] 民主党政策集INDEX2009 農林水産
 

2010.01.06  
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