雑感 | ・金属の価格高騰と技術開発 |
− 金属の価格高騰と技術開発 −
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ご承知の通り、金属の価格が急騰し、お金になるというので、電線やステンレス製金具、はたまた側溝の鉄製ふたまで、金属や金属製品の盗難事件が相次ぎました。 例えば、鋼やステンレス鋼鈑、銅線の1989年(平成元年)からの価格推移をみてみると、2005〜06年までは、ほぼ横ばいか若干下がり気味でしたが、2005年頃から急騰が始まり、ここ2〜3年の間に、鋼が1.6倍、ステンレス鋼鈑が1.8倍、銅線が 2.5倍に値上がりしました。 ・『炭素鋼、ステンレス鋼鈑、銅線の価格推移』のグラフを見る → http://washimo-web.jp/Information/MetalPrice.htm また、ほとんどの製造業で不可欠な素材であるレアメタル(希少金属)は、さらに値上がりがひどく、2005〜06年の価格に比べて、ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、マンガンが、それぞれ 3.3倍、2.2倍、2.7倍、2.5倍、3.7倍に値上がりしています。 ・『レアメタルの価格推移』のグラフを見る → http://www.jogmec.go.jp/data/data_2_3.html 金属価格の高騰の原因として、まず中国の経済成長が挙げられます。自動車の急増や建物の建設ラッシュ、さらに北京五輪に向けて社会基盤整備が急ピッチで進められていることもあって、各種金属の需要が急増しています。さらに、インドやブラジルなどの新興工業国でも金属の需要が伸びているのです。加えて、商品市場で、金属が確実に値上がりが見込める銘柄とみなされるようになり、多額の投機的資金が流入し、値上がりに拍車をかけました。 金属材料の値上がりは、商品価格に影響を及ぼさずにはおかないでしょう。しかし、価格を上げれば売れなくなるので、製造コスト(原価)の上昇分をそのまま商品価格に転嫁するというわけにはいきません。つまり、メーカーにとって、資源は、開発・設計・生産の根幹を揺るがす大変悩ましい問題なのです。 これまで技術開発は、経営環境の変化や社会的要請等に対応してきました。自動車産業を例にとれば、排気ガス規制が施行されると、それに適合する技術の開発がなされ、地球温暖化や原油高のなかでいま、燃費の良い車の開発、さらには化石燃料(石油)を使わないエンジンの研究・技術開発が進められています。 同様に、金属価格の高騰が技術開発の新しいモチベーション(動機付け)を生まないわけがありません。高値で入手しにくいレアメタルの材料の使用を『減らす』、あるいは安価で入手し易い材料で『代替する』ことを基本とした技術開発の取り組みが始まり、多様なアイデアの技術開発がなされるものと思われます。 そして、最近話題になっているのが『都市鉱山』(Urban-Mine)です。携帯電話やパソコンなどの電子機器類には、さまざまな非鉄金属やレアメタルが使われています。したがって、私たちが住む『都市』に捨てられた廃棄物の山は、膨大な鉱物資源が眠る『鉱山』ということわけです。 確かにわが国には自然鉱山はありませんが、わが国の『都市鉱山』の埋蔵量は、金が6800トン、銀が6万トンで、それぞれ世界の埋蔵量の約16%、約22%に相当し、液晶などに使われるインジウムは世界の埋蔵量の実に61%に相当するそうです。わが国は、世界有数の希少金属資源国というわけです。今回の金属価格の高騰で、身近にあるそれらの貴重な資源を繰り返して使う技術開発にも拍車がかかるものと思われます。今後の金属価格の動向と共に、関連する技術開発の動きに注目していきたいと思います。 |
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2008.03.12 | ||||
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