雑感  ・たかがマンガ、されどマンガ   
− たかがマンガ、されどマンガ −
『ドラえもん』、『ドラゴンボール』、『NARUTO』など、日本マンガが今世界を席捲しています。アメリカだけでなくフランスでも日本マンガブームで、フランスにおける日本マンガの売上数は、漫画全体の約40%を占めているそうです。
 
また、日本マンガを学ぼうという人々が出てきて、日本スタイルの漫画家やイラストレーター、編集者を養成する専門学校、ユーラジアム(Eurasiam)が2005年、パリに開校しました。
 
そうした動きに呼応するかのように、外務省は今年(2007年)5月、『国際漫画賞』の創設を発表しました。ポップカルチャー(学問や芸術などのハイカルチャーに対して、一般大衆が広く愛好する文化のこと)の文化外交への活用の一環として、海外で漫画文化の普及活動に貢献する漫画作家を顕彰するのが目的で、第1回実行委員会の委員長は、もちろん、大のマンガ好きで知られる麻生太郎外務大臣(当時)です。
 
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今年5月大阪府泉佐野市で開催された第48回『外国人による日本語弁論大会』の模様がNHK教育テレビのETV特集で放映されましたが、カナダから日本の大学に留学中の女性、チェン・チン・ティンさんの『ドラえもんの空、私の空』と題するスピーチも印象深かったスピーチの一つでした。
 
チェンさんは、壁にもたれて座り、お父さんから買ってもらった『ドラえもん』に読みふける女の子でしたが、小学生のある日、生まれ故郷の香港を離れ、家族とともにカナダに移住せざるを得ませんでした。
 
息苦しくさせるような灰色の空の下、不慣れな環境と人々に囲まれ、不安と孤独でいっぱいになりました。そんなとき、チェンさんを勇気付けてくれたのが、香港から持ってきた『ドラえもん』の漫画でした。
 
漫画の中で、のび太やドラえもんたちの友情や喜びは確かなものです。彼らはどんな困難にあっても結局もとに戻れ、友だちが離れていくことはありません。チェンさんは、彼らの背後にまばゆいほどの空をみます。そして、子供心に、その場所、その空に憧れるようになりました。
 
時間が経って、チェンさんはあの空は、世界の反対側にある、日本という国の空だということを知ります。それから十年が経ち、半年ほど前、留学するため日本にやって来たチェンさんの頭上の空は、今まで見た中で一番素晴らしいものでした。そして、『将来はもっと素晴らしい晴天を見ることができると信じている』と言ってスピーチを結びました。
 
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団塊の世代が子供の頃は、親から『漫画なんか読んでいて・・・』といわれ、漫画は小説などに較べて低くみられていました。今でもそうかも知れませんが、日進月歩で数え切れないほどの良作の漫画やアニメが量産され、それらを楽しむことができるのも、国が平和で繁栄していればこそのことです。
 
漫画に描かれている日本の一般家庭のありふれた情景や茶の間の光景が輝いてうつるということでしょう。日本のマンガやアニメが、世界中の人たちに希望や勇気を与えてやまないポップカルチャーであるとすれば、それは立派な平和的国際貢献の一つだといえるのではないでしょうか。
 

2007.08.29
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