コラム  ・ 菊人形   
− 菊人形 −
今年(2007年)10月1日より始まったNHKの連続テレビ小説『ちりとてちん』は、福井・若狭を舞台の一つにしたドラマのようですね。昨日(10月30日)の放映では、『ホンニイッチョイッチョライだね〜』という福井民謡の懐かしいフレーズが流れていました。
 
もう30数年前の昭和40年代後半の話しになります。著者が、鹿児島の地元大学の工学部に在学中、関西の国立大学から一人の技官が転勤してきました。焼酎が好きな人で、飲めば『イッチョライ節』を唄って聴かせたものでした。
 
  1. はぁー、北陸トンネル、
     イッチョライだね〜
     ツバメが〜くぐるよ〜、それくぐるよ〜、
     福井見たさ〜にちょいとくぐる、
 
     そーとも白山雪の肌、
     ホンニイッチョイッチョ
     イッチョライだねぇ〜
 
『イッチョライ節』は、福井県の置県80周年と北陸トンネル開通を記念して、1962年(昭和37年)に西沢爽氏作詞、古賀政男氏作曲によって作られた新民謡で、白山のほかに、荒波ドンと打つ東尋坊、芦原はいで湯の町、鐘が鳴るなる永平寺などがでてきます。『イッチョライ』とは、“一張羅”の方言で一番上等という意味だそうです。
 
そして、3番にでてくるのが次の歌詞です。
  
     そーとも武生(たけふ)は菊人形、
     お〜ら〜の女房に
     似た顔さ〜
 
何回も唄って聴かせるので、ついに覚えてしまったものです。その技官も、飲みすぎが原因でしょう、著者が卒業して神戸に就職してまもなく、40歳前の若さで亡くなってしまいました。
 
菊人形は、明治末期までは東京千駄木(せんだぎ)の団子坂が有名で、のちに両国国技館で大規模に催されたそうです。現在では、日本三大の、大阪の枚方(ひらかた)、福井の武生、福島の二本松が有名でしたが、残念ながら、 100年近く続いた枚方の菊人形は一昨年(2005年)で終わりになりました。
 
武生と二本松では、今年はいずれも風林火山をテーマにして現在開催中で、山本勘助などが鮮やかに再現されているそうです。
 
    できあがるほどに哀しき菊人形  奥山源丘
    向き合ひて遠まなざしの菊人形  西村和子
 
千葉にお住まいの桜さんは、菊人形と水の取り合わせを詠みました。
 
    菊武者の袖より水の零れけり  桜
 
赤穂浪士の浅野内匠頭か誰かの菊人形でしょう、いままさに切腹しようとする姿のままで菊人形が展覧会の会期を終えてしまいます。発想が面白いです。 
 
    切腹のいまだはたせず菊人形  岬雪夫
 
山間のこじんまりした無人駅のホームの改札口近くに菊人形を置いてみました。菊人形といっても小さな無人駅のこと、一体の武者人形に1つか2鉢の菊が添えてあるだけです。
 
    菊武者の見得を切りをり無人駅  ワシモ
 
乗降客がたまにしか来ない無人駅で、菊武者人形が得意然として大見得(おおみえ)を切り続けています。いつまでも続けられて欲しい菊人形です。
 

2007.10.31
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