『私(脳卒中による片麻痺患者)が指を動かそうとすると医師がタイミングよく押してくれます。ただそれだけの運動を 100回ほど続けた後のことです。4年間まったく出来なかった指の動作が楽にできるようになりました。脳に眠る再生力とその力を呼び覚ます脳科学。回復不能といわれた脳がある刺激によって短期間に蘇る。』(NHKスペシャル(2011年9月4日放送)より)
促通(そくつう)反復療法(川平法)というリハビリテーション治療法をご存知でしょうか。川平和美・鹿児島大学名誉教授(元鹿児島大病院霧島リハビリテーションセンター長)が開発した最新のリハビリ法です。促通とは、神経系または神経筋の接合部に複数の刺激を加えると、その効果が単独の刺激の効果の和よりも大きくなる現象をいいます(大辞林・第三版)。
これまで脳卒中で片麻痺(半身不随)になると、破壊された神経細胞は再生しないから、片麻痺は治療しても回復はしないという考えが常識でした。そのため、片麻痺の患者さんのリハビリテーションは麻痺のない下肢や上肢を鍛えて、歩行や日常生活が出来るようにすることが目標とされてきました。
ところが、脳科学の急速な進歩で、脳の一部が破壊されても、損傷を免れた他の部位が損傷した部位の役割を代行する能力、いわゆる可塑(かそ)性があることが明らかになってきました。川平教授は、刺激が伝われば、損傷した部位の代役を果たす脳の神経回路がどんどん強化されることに着目しました。
そして、リハビリ患者が麻痺した手足を動かそうとするタイミングにあわせて、治療者が操作してやって必要な神経回路に、ピンポイントで刺激を伝えて、目標とする動作を誘発させる治療を根気よく繰り返すことで、必要な神経回路を再建・強化するリハビリ法を完成させました。これが促通反復療法(川平法)です。軽度〜中度の麻痺患者を中心に成果を上げているそうです。
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