コラム  ・堅香子(かたかご)の花   
− 堅香子(かたかご)の花 −

春の訪れとともに、あちこちからカタクリ(片栗)の便りが届きます。南九州では身近で見れない花なので、憧れの花の1つです。傾けた籠(傾籠)のように花を咲かせるところから、古名を堅香子(かたかご)と言います。
 
千葉県にお住まいのいずみさんから、俳句をお寄せ頂きました。
 
     訪ねれば堅香子の群れ昏くあり  いずみ
 
カタクリの花を訪ねてやっとたどり着くとなんと一面の群生。濃紫色の花の群れが昏(くら)く映ったほどだったのでしょう。
 
春先に花を咲かせ、夏までの間に光合成(こうごうせい)を済ませて根茎や球根に栄養を蓄えるとさっさと葉を落とし、その後は根茎や球根のまま地中で過ごす植物があって、それらをヨーロッパでは、スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)というそうです。
 
語訳は、単に『春植物』と言うようですが、phemeral は蜻蛉(かげろう)のことですから、『はかない春の植物』という意味でしょう。そのスプリング・エフェメラルの代表とされているのがカタクリです。
 
歳時記(角川書店『合本俳句歳時記 第三版』)に、次の句がありました。
 
     片栗の花ある限り登るなり  八木沢高原
 
昔は日本では落葉広葉樹林のある各地で広く見られたそうですが、近年では乱獲や盗掘、土地開発などによって減少しているようです。カタクリが花を咲かせるまでには地下で8年を経る必要があって、育てるのが大変なため盗掘されやすいのかも知れません。
 
旭川の突哨山(とつしょうざん)には、日本最大級のカタクリ群生地があるそうです。『白鳥大橋 Photo Gallery』さんのサイトを覗かせて頂きましょう。
・突哨山
→ http://www.ne.jp/asahi/hokkaido/swanbay/hokkaido/totsusyo/index.html
 
片栗は、また、片栗粉(かたくりこ)とともに、働き盛りの頃の元気な母の姿を思い出させます。
 
片栗粉は、餅つきのとき餅取り粉として使っていましたが、今のように食べる物が豊富でなかった子供の頃、母が良く作ってくれたのが片栗粉で作った夜食でした。片栗粉を水でとき、弱火で煮てどろどろにしたのに砂糖を加えただけの夜食でしたが、熱々の出来たてを匙(さじ)ですくいながら、フーフーと食べると温まったものでした。
 
片栗粉は現在、その大半がジャガイモから取ったデンプンで作られていますが、本来は、カタクリの根から得られるデンプンを精製して作られるものでした。
 
九州でも、熊本県中部にある目丸山や京丈山、雁俣山などで、自生のカタクリが見られるそうです。いつかカタクリに出会えたら良いです。

2006.03.29
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