レポート | ・ゴルフ場になった特攻基地 |
− ゴルフ場になった特攻基地 −
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開拓団といえば、山林原野の未開地に入って森林を伐採し、土地を切り拓(ひら)くイメージがありますが、鹿児島県出水市には、航空基地跡に開拓団が入植し開拓がなされた歴史がありました。 海軍航空隊出水基地は、昭和12年(1937年)に飛行場の建設が始まり、昭和18年に開隊、すでに日本軍の敗色濃い時代でした。開隊当時は、練習航空隊として予備学生、甲種予科練等の陸練操縦教育が行なわれていましたが、昭和20年(1945年)4月以降は、特攻基地となり、沖縄の米機動部隊に対して特攻攻撃を行い、約 200名の若者が南海に散華して行きました。 昭和20年8月15日、戦争が終わると、食糧難の中でとにかく喰っていくのに切羽つまっていた基地周辺の人たちは、使用されなくなった基地を開墾してサツマイモを植え始めました。 昭和22年(1947年)になると、農地改革(農地解放ともいう)が始まり、その一環として国有地である基地跡が正式に民間に解放されることになり、基地周辺の農民1戸につき、5畝(せ)から1反歩(5〜10a)の農地割り当てが始まりました。 当時、基地周辺には地元農民のほかに、外地(満州や上海など)からの引揚者、復員軍人、航空省の居残りなどがいました。それらの人々は、もともとは出水近辺の出身者であったり、縁故があった人たちで、飛行員の生き残りには、福島の出身者などもいました。 そうした人たち36戸が、自分たちにも解放せよと要求運動を始めましたが、農地として払い下げを受けるには協同組合の組織化が必要だということで、組織されたのが、『鹿島開拓農業協同組合』でした。その名前、鹿島(かしま)は『鹿島立ち』という出発を祝う言葉にあやかって付けられたものでした。そして、昭和23年に、一戸当たり1町2反歩( 120a)の配分がなされました。 1町2反歩と言っても、払い下げられたのは飛行場跡のコンクリートの多いところでしたし、コンクリートのないところも鍬(くわ)を入れてみれば岩盤だったりで、まともなところが半分もないという状況でした。開墾は困難を極めましたが、それでもコンクリートを砕き、岩盤に鍬を入れ、開墾が続けられました。 開拓団は、開墾した土地に夏はサツマイモを植え付け、冬は麦や菜種を植えました。収穫のなかから、20年の年賦償還で地代を払っていく必要がありました。そのような努力と苦労を経て、何とかやっていける目処(めど)が見えてきたという矢先の昭和30年(1955年)に、飛行場の再建計画の話が舞い込んできます。基地の中でも滑走路跡は未開拓のまま残されていたのです。 九州新幹線出水駅から車で5分、出水市街地の真ん中に出水ゴルフクラブというゴルフ場があります。そのゴルフクラブの30周年史から記事の一部を転載させて頂きましょう。
宮崎県児湯郡新富町大字新田に、新田原飛行場(にゅうたばるひこうじょう)という航空自衛隊の基地があります。国内最強の技量を持つパイロットらで編成された飛行教導隊の本拠地としても知られていますが、この飛行場は当初出水に建設される計画だったのです。住民は莚(むしろ)旗を立てて反対し、結局出水で飛行場が再開されることはなく、滑走路跡はゴルフ場となりました。 今年(2007年)の、桜が満開の3月末、出水基地の残存施設の取材に出かけました。取材の途中でたまたま飛び込んだのが、外地からの引揚者で実際に開拓に携わり、今日まで出水で暮らしてこられた方のお宅でした。 このレポートは、そのとき伺った話をまとめたものですが、そのとき一冊のアルバムを見せてもらいました。開拓農業協同組合はその役割を終え、昭和49年(1974年)に解散しました。見せてもらったのは、第一鹿島組合解散記念のアルバムでした。開拓音頭という唄が作られていたらしく、表紙を開けると1ベージにその歌詞が載っていて、開拓に携わった各家族の写真が十数ページにわたって綴られていました。 ・第一鹿島組合解散記念(1974年)アルバム → http://washimo-web.jp/Information/kashima01.gif → http://washimo-web.jp/Information/kashima02.jpg 出水ゴルフ場のすぐ近くには、コンクリート製の頑丈な地下壕が完全な形で残されていて、そこに、隊門近くにあった哨舎(しょうしゃ)を移築し特攻碑公園が作られ、特攻碑や銀河隊の碑が建てられています。出水ゴルフのある一画は『平和町』と名付けられ、また開拓農家が密集していた地区は『鹿島』と名付けられていて、基地跡開拓の歴史が地名にも残されています。 【備考】 下記の旅行記があります。併せてご覧下さい。 ■旅行記 ・特攻基地〜海軍航空隊出水基地 |
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2007.08.15 | ||||
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