コラム  ・ホヤ 〜 老人語   
− ホヤ 〜 老人語 −
先日開かれた著者の住む北薩摩地方の集落の集会で、『街灯のホヤが切れているので取り替えて欲しい』という発言が飛び出しました。子供の頃から親たちや大人たちがそういうのを聞いていましたから、『ホヤ』が電球のことであるのは分かりましたが、果たして鹿児島の方言なのか標準語なのか疑問がわきました。
 
調べてみると、ほや【火屋/火舎】は、ランプやガス灯などの火をおおうガラス製の筒のことで、ここから電球のことをホヤというようになったのだそうです。つまり、全国どこでも通用するはずのれっきとした標準語だったわけですが、『老人語』であるとあります。『老人語』という語彙(ごい)の分類があることを知りました。
 
1972年(昭和47年)に三省堂が初版発行した『新明解国語辞典』には、『すでに青少年の常用語彙の中には無いが、中年・高年の人ならば日常普通のものとして用いており、まだ文章語・古語の扱いは出来ない語』という定義で、『老人語』が設定され、例として、日に増(ま)し、平(ひら)に、ゆきがた、よしなに、余人(よにん)が上げられていたそうです。
 
これに対して、初版発行直後から、複数の知識人が、『自分の常用語に怪しからぬレッテルを貼られた』と述べ、物議を醸したそうです。そして、『新明解国語辞典』の第4版(1989年)以降、版を改めるごとに、一部の語彙において『老人語』という説明を『古風な表現』『やや改まった表現』などに改めたり、『老人語』の説明を削除したりし、第7版(2012年)で『老人語』という説明は完全に廃されました。
 
新明解国語辞典で『老人語』という説明はなくなりましたが、ホヤのように、若い世代の人が『それ何に?』って理解に苦しむ言葉が使われる場合があるわけです。新明解国語辞典において『老人語』『老人語的』とされた語彙には、つぎのようなものがあります。
 
朝湯(あさゆ)、いかつい、いかばかり、行きしな(いきしな)、異存(いぞん)、異な(いな)、胃の腑(いのふ)、今時分(いまじぶん)、女子(おなご)、家中(かちゅう)、斯様(かよう)、厠(かわや)、今生(こんじょう)、銭(ぜに)、月の物(つきのもの)、父(てて)、内儀(ないぎ)、女人(にょにん)、ハンケチ、半ドン、別品(べっぴん)、道すがら、物取り(ものとり)、行方(ゆきがた)、湯殿(ゆどの)、ゆるり、洋行(ようこう)、嫁女(よめじょ)などなど。(以上、Wikipedia を参考)
 
これらのほかにも、1947〜1949年生まれの、いわゆる団塊の世代が、若い頃馴染んでいた言葉で、最近だんだん使われなくなってきている言葉がたくさんあります。
 
たとえば、『赤チン』『猿股(さるまた)』『汽車』『接吻(キス)』『帳面(ノート)』『さじ(スプーン)』『チョッキ(ベスト)』『アベック(カップル)』『前掛け(エプロン)』『写真機(カメラ)』『スチュワーデス(客室乗務員)』など。
 

2015.04.15
あなたは累計
人目の訪問者です。
 − Copyright(C) WaShimo AllRightsReserved.−