雑感  ・平和学習   
− 平和学習 −
特攻基地と言えば、鹿児島県の知覧飛行場が広く知られていますが、知覧から西へ約15kmの吹上浜に面する位置に万世(ばんせい)飛行場という特攻基地があり、終戦直前の昭和20年(1945年)3月から7月までの約4ヶ月間に、 201人の特攻隊員が沖縄に向けて出撃し、帰らぬ人となりました。
  
万世特攻平和祈念館に、『子犬を抱く少年兵』と呼ばれる一枚の写真があります。飛行服姿の5人の若者が笑って写っている写真で、中央の若者が子犬を抱いています。昭和20年5月26日に写されたと言われる写真で、5人の若者は翌日早朝、特攻隊員として沖縄の空に出撃し散華していきました。
  
2年前の2008年7月のことになりますが、ある小学校の6年生の児童たちからメールが届きました。
  
私たちのクラスでは、戦争と平和について学習しているところです。調べ学習をしているうちに、『万世特攻隊』のことを知りました。万世特攻隊の人たちが戦争へ行かなければならないと家族が聞いたときに、その家族の方々は、どんな思いで送り出されたのでしょうか。そんな考えが出てきて、グループのみんなで質問させてもらうことにしました。おいそがしいことと思いますが、私たちの学習にご協力いただけますようどうぞよろしくお願いします。というメールでした。
 
子供たちの質問に対して、下記のメールを返信しました。
 
              ***
 
〇〇小学校6年2組 6ぱんの皆さん、こんにちは。はじめまして。
鹿児島県に住んでいるワシモといいます。
 
『万世飛行場跡』のページを見てもらったのですね。ありがとう。
ホームページが、皆さんの学習の題材として少しでも役に立てばうれしいです。
 
私は、1949年(昭和24年)生まれで、今年59歳です。だから、おじさん(おじいさんかな?)と呼ばせてもらいます。ハンドルネームがワシモだから、ワシモのおじさんということになりますね。
 
おじさんは、戦争が終って4年たって生れた戦後生まれだから、当時の家族の人たちが、どんな思いで特攻隊員たちを戦場へ送り出したのか、的確に述べることはできないのかも知れません。でも、特攻隊のことを自分のホームページにのせているのだから、皆さんに質問されたら、何か述べないわけにはいきませんよね。そう思うので、以下におじさんの意見を述べてみます。
 
ホームページにのせてある『小犬を抱く少年兵』の写真は、とても有名な写真ですが、写っている5人のお兄さんたちは、今のお兄さんたちと何ら変わらない明るい笑顔のお兄さんたちですよね。
 
おじさんにも子供がいるので(もう成人していますが)、あんな笑顔の自分の子供たちが、明日確実に死ぬために戦場へ飛び立つのだと思うと気ちがいになるほど、なげき悲しみ、苦しまずにはおれないと思う。自分が身代りになって死んででも、子供たちの命を救いたいと思う。
 
でも、当時はそれを態度に出すことも、口にすることもできなかった。断腸(だんちょう)の思い(=はらわたがちぎれるほどの思い)で、送り出すしかなかったのではないのかな。国のために死んで行くのだ、しかたないのだ、あるいは名誉(めいよ)なことだとあきらめるしかなかった。戦争当時は、国全体が、それが当たり前だという雰囲気(ふんいき)にあったのだと思います。
 
それでも、戦争で自分の肉親を失った人たちはあきらめ切れませんね。悲しみと苦しみと無念さ、困難を一生背負って生きて行かねばなりません。大変むごい、不幸なことですね。それが戦争というものだと思います。
 
だから戦争はしてはならないのです。でも国と国の間で争いごとは絶えません。では、どうしたら良いのでしょうか? 人を殺したり傷つけたりする武力で争いを解決する、つまり戦争で解決するのではなく、話し合いによって解決すれば良いわけです。それが、人類が追求して実現したい理想的な世界の姿です。
 
それが実現できるのであれば、この考え方に反対する人はだれもいませんよね。でも、現実的には2つの考え方があるのです。一つは、(1)武力を持っていたら、いずれ戦争を起こしたり、戦争に巻き込まれたりするので、武力を放棄(ほうき)して、あくまでも話し合いによる理想の世界の実現を目指そうという考えです。もう一つは(2)強い武力を持っている国が戦争をしかけてきたらどうするのだ、武力がないと国は守れない、積極的に武力を持とうという考え方です。
 
どの道を選ぶか、どうやって自分の国を守るか、それは、国民の総意として決めなければならないことだと思います。そのためには、国民一人一人がそのことについて真剣に考え、しっかりとした自分の意見を持ち、それを国の政治に反映することが必要です。皆さんが戦争と平和について学習しているのは、そのためではないのかなとおじさんは思います。
 
以上、皆さんの話し合いのための何かの参考になれば幸いです。
 
              ***
 
これに対して、翌日担任の先生から、『お返事いただき有難うございました。初めてのメールを使っての質問という取組でしたので、子どもたちは半信半疑だったというのが正直なところでした。しかし、お返事を見せていただき、今朝は、感動からはじまりました。広島への修学旅行を実施します。それに向けて、平和と命への取り込みをしている最中です。』というメールを頂きました。
 
【備考】
 ・『小犬を抱く少年兵』の写真は下記のページで見れます。
 ■旅行記 ・万世飛行場跡 − 鹿児島県南さつま市
  → http://washimo-web.jp/Trip/Bansei/bansei.htm
  

2010.08.11  
あなたは累計
人目の訪問者です。
 − Copyright(C) WaShimo AllRightsReserved.−