コラム  ・春の灯   
− 春の灯 −
『山鹿灯籠浪漫・百華百彩』の、灯の入れられたオブジェの幻想的な美しさはもちろんのことでしたが、昼間見たオブジェの並びそのものも十分に美しく魅力的でした。約4,000個 という傘灯籠や竹灯りが、一つとして手を抜くことなく丁寧に設(しつら)えられていました。
 
日本には昔より、四季折々の自然や食べ物、行事を楽しみ、手間ひまをかけて丁寧に暮らす文化がありました。そうした日本伝統の『美意識』を彷彿とさせました。今、私たちがグローバル化あるいは経済効率という名の下に、軽視し見失いがちになっていやしないかと思われる、私たちが拠(よ)って立つべき『日本の美意識』という、私たちのバックボーンを再認識させてくれたような山鹿の冬灯りの祭りでした。
 
さて、灯りといえば、四季の中で暮らすわれわれ日本人は、四季の灯りにそれぞれの風情を感じてきました。『夏の燈(ひ)』『夏ともし』は、涼を求めたい灯りであり、『秋の燈』『秋燈(しゅうとう)』には、じいんとしみる静けさ、人懐かしさを感じます。
 
もちろん、『冬の燈』『冬ともし』『寒燈』は、寒さの厳しい冬の候の燈火で、人肌が恋しい。明るく華やいだ感じがあるのが『春の燈(ひ)』『春燈(しゅんとう)』『春ともし』あるいは『春の燭』です。角川書店の『合本俳句歳時記』に、召波(江戸後期の俳人で与謝蕪村の門下、黒柳召波のこと)の句に『春の燈油盛りたるの儘(まま)』という句があるので、蕪村時代に新季題として初めて取り入れられたものであろう、とあります。
 
    春燈下紙にいただく五色豆   清崎敏郎
    逢初めは雨きらめける春燈下  高柳重信
    枕辺の春の灯(ともし)は妻が消しぬ  日野草城
 
春の灯りでないと、夏や秋、あるいは冬の灯りでは、このような艶めいた句は詠めないですね。余談になりますが、3つめの日野草城(ひのそうじょう、1901年〜1956年)の句は、昭和9年、当時の俳壇に衝撃を与え、いわゆるミヤコホテル論争を巻き起こした、新婚初夜をテーマの連作10句『ミヤコホテル』に含まれている一句です(詳細については、日野草城 ミヤコホテル でネット検索できます)。
 
(1) 5・7・5の十七文字。(2) 季語を一つだけ入れて、季重なりは避ける。(3) 切れ字『や』『かな』『けり』などは、重複して使わない。(4) 切れ字『や』で切ったら、そのことについてはもうそれ以上言及しない。(5)三段切れを避ける。を基本としたら俳句が詠めます。あなたも、春の灯の季語で、艶めいた句を詠んでみませんか?
 
旅行記 ・山鹿灯籠浪漫☆百華百彩 − 熊本県山鹿市
 

2009.03.08
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