コラム  ・仏壇の花の向き   
− 仏壇の花の向き −
明後日の3月20日は春分の日です。著者が住む鹿児島県は、生花(切花)の有数の生産県であると同時に、日本一の消費県だといわれます。県内では、月に何度もお墓参りをし、そのつど花を取り替えるので、どのお墓にも元気のいい生花が絶えません。ですから、ドラッグストアーやホームセンター、コンビ二の入口には、生花が置かれていて、よく売れています。
 
わが家は浄土真宗で、法事ではお経の後にお坊さんの説教がありますが、あまり長い説教は困りものです。というのは、田舎の法事は畳の間で行なわれることが多く、正座のつらさで説教を聴くどころではなくなるからです。そこはお坊さんも心得たもので、『楽にして下さい』といわれます。そのときは、見栄をはらずに素直にしたがっておかないと、長い説教になって大変だ〜ということになります。
 
さて、去る3月1日、わが家では父の3年忌の法要で、そのときの説教は、仏壇の花の向きについてでした。ある歳若い夫妻の新築宅へ仏壇の開眼供養に出かけたお坊さんは、仏壇の前に座してお経を始めようとしたそのとき、仏壇の左右に飾られた花が向こう側(仏壇の方)を向いて置かれているのに気づきます。そこで、お坊さんが花の向きをこちらに向き直すると、うしろの方で家族のひそひそ話しがしたそうです。
 
おつとめが終って、お坊さんがひそひそ話しのわけをたずねると、『実は昨夜、花を飾る向きについて家族で議論があった』のだそうです。奥さんがご主人に、花はどっちに向けて飾ったらよいのかたずねます。はっきりはわからないが、こっちの方に向けてあるんじゃないかと主人がいうと、奥さんも自分もそう思うという意見になりましたが、すかざす子供さんが、『仏さまに手(た)向けるのだから、仏壇の方に向けるべきだ』と意見を述べ、そういわれればそうだということになったのだそうです。
 
当然、わが家を含めどこの家庭でも、仏壇の花はこちらに向けて飾ってありますが、それは昔からそうしているからそうするのであって、その意味を考えてのことなのでしょうか?
 
池に蓮(はす)が清らかな大輪の花を美しく咲かせ、様々な花があるがままに美しく咲き誇り、かぐわしい香りを放っている阿弥陀さまの浄土。その浄土へ間違いなく生まれ変わって欲しいと阿弥陀さまは願われ、私たちに働きかけをされます。その働きかけの場が仏壇だということです。
 
したがって、私たちが仏壇に花を飾るのは、感謝の気持ち、ご恩に報いる気持ちを込めて阿弥陀さまへ花をお供えするという意味もありますが、極楽浄土に咲き誇る花々のように仏壇を飾ることによって浄土を偲び、阿弥陀さまの働きかけに触れさせて頂くということですから、花はこちらに向けて飾るのだそうです。ろうそくもまた同様、仏さまのために灯すというよりは、御仏の光として灯し、その光を私たちが頂くことに他なりません。

2009.03.18
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