コラム | ・花 |
− 花 −
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『花』といえば、あなたは先ず何を思い出しますか? 『♪川は流れて どこどこ行くの〜、♪人も流れて どこどこ行くの〜』で始まる喜納昌吉さんの『花〜すべての人の心に花を〜』という琉球ポップスの名曲を思い出す人もいるでしょうし、当節の花や自分のお気に入りの花を思い出す人もいるでしょう。 俳句で花といえば、桜の花のことをさします。たとえば、桜の咲く頃に急に冷え込むことがありますが、その頃の季感を『花冷え』といい、『花の雨』は、桜の咲く頃の雨のことをいいます。 人体冷えて東北白い花盛り 金子兜太 花冷えの百人町というところ 草間時彦 別々に拾ふタクシー花の雨 岡田史乃 借り傘に花の雨いま街の雨 北野平八 『花筏(はないかだ)』は、散った桜の花びらが水に浮かんで流れて行くさまを筏に見立てていい、『花疲れ』は人出の多さや陽気のせいもあって花見に疲れるさまをいいます。 泣きに来し裏川いまも花筏 中野きみ 雲も水も旅をしてをり花筏 相生葉留実 花疲れして観音の前にいる 佐藤尚子 花疲れ膝にこぼせる五色豆 斉藤朗笛 さて、藤沢周平の時代小説は、たくさんの作品が映画化されていますが、つい最近の2010年3月13日に封切りされたのが『花のあと』。同名の短編を、以登(いと)役を北川景子の主演で映画化したもので、”花のあと”とは、桜の時季が終った頃の季感のことです。 娘ざかりを剣の道に生きた武家の娘以登は、身分は低いが藩随一の剣士・江口孫四郎との手合わせを父に懇願します。竹刀を打ち込む中で孫四郎に胸を焦がしている自分がいることに気がつく以登。しかし、それはかなわぬ恋でした。家が定めた許婚がいる以登は孫四郎への想いをきっぱり断ち切ります。 それから数ヵ月後、孫四郎が、藩の重役・藤井勘解由(かげゆ)の卑劣な罠にかかって自害したのです。 それが真実なら、藤井勘解由を生かしてはおけぬ、と以登は思います。江戸から帰国した許婚(いいなずけ)・片桐才助の手を借りて事件の真相を知った以登は、正義と、ほどよい距離をとりながらも今なお自分の中に残る孫四郎への思いのために剣を取るのでした。 |
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2010.03.24 | ||||
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