コラム  ・頑張れ!日本の中小企業   
− 頑張れ!日本の中小企業 −

4月18日、時事通信が、『東日本大震災後、韓国政府が被災で操業停止などに追い込まれた日本企業の工場を韓国に移転するよう促す案を、日本政府に非公式に打診していたことが17日、明らかになった』というニュースをインターネット配信していました。日本企業を誘致して部品・素材産業の高度化を図ろうという狙いのようです。
 
韓国は、携帯フォン、半導体、ディスプレイなどの情報技術(IT)分野で世界市場の1、2位を争っていますが、実態は日本製の部品や素材に大きく依存していて、輸出が増えれば増えるほど日本からの輸入が増加するため、対日貿易赤字が膨らんでいる状況にあります。2000年に113億ドルだった対日貿易赤字は、2010年には361億ドルまで増えているそうです[1]
 
韓国の産業は、部品・素材産業と中小企業の育成が遅れ、核心部品や素材、設備などの対日依存度が高いという構造的問題を抱えており、それが膨大な対日貿易赤字の原因になっています。これらの問題は、1960年代以降の産業発展の過程で形成され蓄積されてきた構造的問題であり、短期間で改善される問題ではないようです[2]
 
韓国は、業界別・財閥別の輸出ノルマを課す形で輸出の増大を図ってきました。目標額を達成できなかった企業にはペナルティが課せられるというので、各企業は最も近くにある工業国である日本から部品・素材を輸入して製品を作り、輸出するということを長年続けてきました。このため、部品・素材産業を育成する余裕がありませんでした[3]
 
また、韓国の組立企業と部品企業との関係は、長期・継続的な協力関係ではなく、組立企業が短期的な利益を優先し、部品企業の低賃金の活用を目的とした単純な生産委託を中心とする下請け関係という側面が強かったといわれます[2]
 
そこで、韓国政府は日本と同じような部品や素材の下請企業を育成しようとしていると言われますが、なかなか成果を上げることができずにいるようです。
 
このような韓国産業の構造的問題をみても、あるいは東日本大震災による部材や部品の供給不足が世界中のものづくりに大きな影響を及ばしていることをみても、日本の中小企業がいかに日本のみならず世界中のものづくりを支えているかがわかります。
 
日本の中小企業の場合は、政府に支援・保護される形ではなく、親企業の要求する厳しい品質と原価低減に応えるために、部品メーカの努力が払われ、企業間競争が行われる形で中小企業が育ってきました。
 
近江商人の経営精神に『三方(さんぽう)よし』という理念があります。商取引においては、当事者の売り手と買い手だけでなく、その取引が社会全体の幸福につながるものでなければならないとう意味での、『売り手よし、買い手よし、世間よし』という理念です[4]
 
部品の発注単価は親企業が決定権を持っているのであれば、下請けは生かさず殺さずの経営コントロールを行うことができるでしょうが、『三方よし』の理念は、『親企業よし、下請けより、世間よし』という企業認識の理念にも通じるのではないでしょうか。
 
東日本大震災に遇われた中小企業者の皆様、震災による部材や部品の不足等の影響を受けて経営的困難に遭われている中小企業者の皆様の一日も早い復旧・復興を祈念申し上げるとともに、”頑張れ!日本の中小企業”と声援を送りたいです。
 
【参考サイト】
[1]東亜日報社説『技術志向の中小企業を育て部品・素材の高度化を
 図れ』
[2]金奉吉『産業構造高度化の高波に追われている韓国』
[3]新たな局面を迎えた韓国ビジネスと中小企業|中小企業国際化
 支援レポート
[4]「三方よし」 三方よしの理念 - 三方よしの原典 
 

2011.05.04  
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