レポート | ・アルミ箔の裏表 |
− アルミ箔の裏表 − |
||||
アルミ箔の、「箔」(はく)という漢字は、角川漢和中辞典によると、『泊が音を表わし、薄からきている。薄い竹片の意。ひいて、金属などの薄いものをいう』とあります。 家庭用のクッキング・ホイル(箔のことを英語でホイル(foil)といいます)などの普及によって、アルミ箔という言葉も近年、ポピュラーになりましたが、もっぱらたばこやチョコレートの包装材として使われていた頃は、『銀紙』と呼ばれていました。 1mmの千分の1の長さ、すなわち 0.001mmを1μm(マイクロメータ)といいます。日本人の髪の毛の太さ(直径)は、80 〜 120 μmぐらいだといわれます。クッキングホイルやチーズ包装用のアルミ箔が、厚さ 12 〜 17μmで、たばこやチョコレートの包装用、レトルトパウチ(袋ごと熱湯に入れ、数分間温めるだけで食べられるもの)用などのアルミ箔は、厚さ6〜9μmです。コンデンサーなど、工業用には、最も薄い5〜6μmの箔が使われます。 日本工業規格(JIS)では、アルミ箔は、『厚さ 0.2m以下のアルミニウムおよびその合金の圧延品』と規定されています。台所のガスレンジまわりでよく使用されるガスレンジマットや油はねガード、三面フード、レンジパネルなどは厚さ、30 〜 50μm、インスタントラーメンなどの容器は 60〜100μmですから、これらもれっきとしたアルミ箔です。 薄いアルミ箔には、なぜ光沢のある表(おもて)面と光沢のない裏面があるのでしょうか? 光沢のない裏面はちょうど、梨の皮の表面のようにざらついているので、『梨地面』と呼ばれます。 箔といえば、金沢の伝統工芸品である金箔があります。金箔は、ひたすら叩き延ばして、アルミ箔よりさらに薄い、1万分の1〜2mm、すなわち 0.1 〜 0.2 μmという厚さの製品が作られます。 大衆消費材であるアルミ箔を叩き延ばして作っていたのでは到底需要をまかないきれないし、採算が取れません。アルミ箔は、圧延という方法で製造されます。圧延とは、2本のロールの間にアルミニウムの薄板をはさんで回転させてつぶし、薄くする方法です。実際は、さらに大きなロールを2本配置して合計4本のロールが用いられます。 図1.圧延の原理 → http://washimo-web.jp/Information/rolling/Rolling101.gif 図2.実際の圧延 → http://washimo-web.jp/Information/rolling/Rolling102.gif しかし、図2に示す方法では、どんなに大きな荷重をかけてつぶそうとしても、達成できる箔の厚さは、10μmが限界です。先人たちは、それでもどうにかしてもっと薄いアルミ箔を作りたいと考えました。 そこで考え出されたのが、『重合せ圧延』です。ロール入側で、材料を2枚重ねにしてロールに噛ませ、出側で一つのコイルに巻き取ります。そうすると、厚さ5μmの箔を作ることができます(最小厚さ10μm÷2枚=5μm)。 図3.重合せ圧延 → http://washimo-web.jp/Information/rolling/Rolling103.gif 出側で一つのコイルに巻き取られた箔は、つぎ分離工程ではぎ取られ1枚ずつに分離されます。圧延ロールと直接接触して圧延される表面は、材料組織がロールによって強制的に一方向につぶされる結果、光沢のある鏡面状態になります。一方、箔同士が接触して圧延される裏面は、材料組織がランダムな方向につぶされる結果、光が乱反射して光沢のない梨地面を呈するのです。 図4.分離工程 → http://washimo-web.jp/Information/rolling/Rolling104.gif ここで、サン・アルミニウム工業(株)(千葉市稲毛区六方町)のホームページの『アルミ箔ができるまで』というページで、実際の製造工程の様子を写真で見てみましょう。 アルミ箔の製造工程 → http://www.sunalumi.co.jp/alumi/alumi3.html 厚さが 12〜 17μmのクッキングホイルは、必ずしも二枚重ねで圧延しなくても製造が可能ですが、製造しやすく製造効率も良いので、やはり重合せ圧延で製造されます。薄いアルミ箔にはなぜ裏表があるかというお話しでした。 |
||||
|
||||
2005.12.14 | ||||
|
||||
− Copyright(C) WaShimo AllRightsReserved.− |