コラム | ・だんまりの花 〜 石蕗の花 |
− だんまりの花 〜 石蕗の花 −
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もう10年ぐらい前のことになりますが、遠出の車のトランクにはいつも連れ合い愛用の『移植ゴテ』が入っていたものでした。ドライブ中、道路ばたに石蕗(つわぶき)が自生しているのを見かけると、2〜3本掘り起こしていただいて帰り、冬は露地植えの花が少ないからというので庭に植えるのです。移植ゴテはそれ用のものでした。 ですから、いまわが家の庭にはあちこちに石蕗の花が咲き誇っています。石蕗の花は菊に似ていて、色も鮮やかな黄色なので花自体は綺麗なのですが、葉が濃い緑の大きな葉っぱで、主木の根元などに下草として植わっている感じというものもあって、地味な花という印象は否めません。そうした印象からでしょうか、『謙遜・謙譲』『困難に負けない』『愛よよみがえれ』といった花言葉をもらっているようです。 石蕗の花といえば、どうしても思い出すのが、三橋鷹女(みつはしたかじょ)のつぎの句です。 つはぶきはだんまりの花嫌ひな花 三橋鷹女 三橋鷹女(1899年〜1972年)は、昭和期に活躍した代表的な女性俳人で、中村汀女・星野立子・橋本多佳子とともに4Tと呼ばれ、その4人のなかでも表現の激しさと前衛性において突出した存在でした。『鞦韆は漕ぐべし愛は奪うべし』『ひるがほに電流かよひゐはせぬか』『この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉』『堕ちてゆく炎ゆる夕日を股挟み』などの代表句があり、石蕗の句もかなり主観の勝った句の一つです。 常套的には、葉陰にそっと身を寄せて咲く石蕗の花の自己主張しない『さりげなさ』といったようなものが詠まれるなかにあって、その淋しく地味な感じを『だんまりの花』と表現し、さらには『嫌ひな花』といってはばかりなく疎んじている、描きようには、新鮮な驚きを覚えたものでした。 だんまりの花という表現はともかく、『嫌ひな花』と断言的に言われるのは、石蕗の花が可愛そうになりますが、正直そういう側面があるということでしょう。花に華やかさや楽しさを求めたいのなら、温室育ちのシクラメンやパンジーなどの園芸植物に向き合えば良い。 石蕗の花は、冬の厳しさや寂しさを直視させる花だといえるしょう。石蕗の花とともに冬を乗り切りましょう。 |
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2014.11.26 | ||||
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