コラム  ・パンとサーカス   
− パンとサーカス −
2014年9月20日(土)の南日本新聞に、『相撲大会の相手を弱い子に変えろ』『運動会延期の判断が遅い。頼んだ弁当代を弁償しろ』といった理不尽な要求が保護者からあって、学校が苦慮しているという記事が載っていました。
 
県教育委員会は、『不当な要求は学校全体のことではなく、自身の子供のことだけを考えた声が目立つ』としていると。
 
そこで、東京大学教授で、科学の啓蒙活動や旺文社の大学受験ラジオ講座でもお馴染みだった物理学者・竹内 均さん(1920年〜2004年)の著書『修身のすすめ』(1984年出版)を読み直してみました。以下は、抜粋です。
 
                       ***
 
現在の日本は、これまでの世界のどの国の歴史にもなかったような繁栄と自由と平和を享受している。しかし、現在の日本がこのような恵まれた国だとは考えてもみない人が多いのではなかろうか。
 
もしそうだとすれば、今からでも遅くはない。われわれは素直に、この恵まれた日本の国に生まれたことを感謝しなければならない。こういう幸運に感謝することを忘れたときに、どういうことが起きるかを、次に述べるローマとギリシアの例によって知っていいただきたい。それは、現在やかましく言われている『成熟病』である。
 
                      (中略)
 
無料のパンを求めて、ローマ市民は大土地所有者や政治家の門前に群がった。彼らの支持と人気を得るために、大土地所有者や政治家は、彼らの一人一人にパンを与えた。
 
こうして働かないで無料のパンを得る方法を覚えた市民たちは、次にはもて余した時間で退屈しのぎをするためのサーカスを求めた。現在でいうレジャーである。
 
ここでこれまた政治家たちは、彼らの支持と人気を得るために、巨大な競技場などをつくって、公共の費用でまかなう競技やみせものを行った。
 
                     (中略)
 
責任や義務を負うことを忘れた市民たちは、権利だけを主張した。エゴの氾濫と悪平等主義の流行である。ここに、『パンとサーカス』によるローマ帝国の滅亡が始まった。 
   
                       ***
      
見物客5万人の収容が可能だったというローマの闘技場『コロッセオ』
使用開始に当たっては、100日間に渡りイベントが続けられ、
数百人の剣闘士が闘いで命を落としているそうです( Wikipediaより)。

2014.09.21 
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