レポート | ・陶器と磁器 |
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− 陶器と磁器 − |
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やきもの(焼き物)には、陶器と磁器があります。磁器のふるさと・佐賀県有田町を訪ねたのを機会に、『陶器』と『磁器』についてまとめてみました。 *** 陶器は、粘土を練って形を作り、1200℃前後の温度で焼成(しょうせい)するのに対して、磁器は、鉄分をあまり含まない良質の石英や長石などを主成分とする陶石を砕き、それにカオリンなどを加えた粉を練って形を作り、1300℃前後の温度で焼成します。わが国で生産される磁器のほとんどが、熊本県天草群島で産出される天草陶石を使っています。 陶器は、焼成後も素地(きじ)は多孔質で粗く吸水性があります。釉薬(ゆうやく)を施し、見た目や触れた感じに暖かみのあるうつわになります。磁器に比べ厚みがあり、叩くとやや低い濁音がします。陶器は、益子、織部、志野、唐津、萩焼、薩摩焼など、全国いたるで焼かれています。 一方、磁器の焼成後の地肌はガラス質で白く、表面がなめらかなため鮮やかで、細かい絵付けができるのが特徴で、吸水性はありません。叩くと、「チ〜ン」という高い金属の清音がします。普段、私たちが食卓で使っている瀬戸物と呼ばれお茶碗などがそれで、磁器には、有田焼、伊万里焼、九谷焼、清水焼、瀬戸焼、美濃焼、砥部焼などがあります。 陶器類は、土器や須恵器(すえき)・土師器(はじき)など、日本に昔からありましたが、「チャイナ」は、小文字で「china」と書けば、磁器のことを意味するように、磁器は中国で発明され、中国だけが作り出せるやきものでした。 一世紀頃には、青磁(せいじ)が、六世紀頃には白磁(はくじ)が発明されましたがそれらの磁器の製法は秘密とされ、中国磁器の肌の白さへの憧れは、日本だけでなくヨーロッパでも同じで、ヨーロッパ諸国は争って中国磁器を輸入しました。 日本で磁器が焼き始められるのは、江戸初期の1616年頃になってからです。慶長の役(1597〜1598年)の際に、佐賀・鍋島藩によって日本に連れて来られた朝鮮人陶工・李参平は、初期の頃、陶器を焼いていましたが、それに満足できず、磁器の原料を探す旅に出ます。そして、1616年、有田の泉山に陶石を発見し、窯を開いたのがわが国における磁器製造の始まりでした。 その後、1640年代に、白磁の上に柿の実のような赤色を出す『赤絵』の技法が酒井田柿右衛門によって確立すると、有田の磁器はヨーロッパの王侯貴族の絶大な人気を得、多くの有田焼が輸出され、のちにはドイツのマイセン窯やフランスのシャンティー窯、イギリスのチェルシー窯などに影響を与えたと言われます。 *** 陶器と磁器について簡単にまとめてみましたが、日頃私たちは、陶器と磁器をあまり区別しないで、たとえば、「全国陶器市カレンダー」、「日本全国陶器祭り」といったサイトのタイトルのように、磁器も含めて陶器で一括(くく)りにして表現しているのではないでしょうか。 磁器のふるさと・有田町では、毎年4月29日〜5月5日に「有田陶器市」が開かれ、JR有田駅から上有田駅までの約5kmの沿道に、約 600軒の店が立ち並び、全国から焼物好きが集まってきます。 一方、瀬戸や九谷では、陶器という言葉は使わないで、「九谷茶碗祭り」「九谷陶芸村まつり」「瀬戸焼陶祖まつり」「瀬戸焼せともの祭」などとしているようです。 ◆下記のページに、有田を訪ねての旅行記がありますので、ご覧下さい。 旅行記 ・『磁器のふるさと・有田を訪ねて−佐賀県有田町』 → http://washimo-web.jp//Trip/Arita/arita.htm 【用語】 (goo 辞書より) カオリン=「高嶺」の中国音から。中国、江西省景徳鎮近くの高嶺に産したので いう。主成分鉱物としてカオリナイトを含む耐火性のある粘土。 釉薬〔ゆうやく〕=釉(うわぐすり)とも言われる。素焼きの陶磁器の表面にかける ケイ酸塩化合物。焼成するとガラス質になり、空気や水を通すのを防ぎ、 耐食性や強度が増すとともに器に美しい光沢を与える。 須恵器〔すえき〕=古墳時代中期から平安時代にかけて作られた土器。轆轤(ろく ろ)成形し、登り窯(がま)で高温焼成した比較的硬質な灰黒色の土器。 土師器〔はじき〕=古墳時代〜奈良・平安時代にかけて用いられた素焼き土器の 総称。赤色の素焼きで文様はない。弥生土器から発達したもの。 青磁〔せいじ〕=釉(うわぐすり)に含まれる鉄が還元されて、緑青色あるいは黄み を帯びた青色を呈する磁器。中国で発達し安南・朝鮮・日本などに伝わ った。 白磁〔はくじ〕=素地(きじ)が白く釉薬(ゆうやく)が透明で、高温で焼いた磁器。 中国古代に興り唐代のものは西アジアからイベリア半島にまで交易 された。日本では江戸初期、有田焼に始まる。 【参考にしたサイト】 [1]陶磁器:フリー百科事典『ウィキペディア』 |
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2006.01.18 | ||||
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