レポート | ・温室効果ガス削減と家計負担 |
− 温室効果ガス削減と家計負担 − |
||||
民主党は、『温室効果ガスを2020年に1990年比で25%(2005年比で30%)削減する』という目標をマニフェスト(政権公約)に掲げています。今年(2009年)8月5日に、東京・霞が関の経済産業省で開かれた総合資源エネルギー調査会需給部会の試算によると、このマニフェストが実行に移されれば、2020年に、一世帯当たり年間36万円の負担増になるといわれます(8月26日付け産経ニュース)。 温室効果ガスを削減すると、(1)一世帯当たりの可処分所得が減る一方、(2)光熱費負担が増えるため、合計で年間36万円の家計負担の増加に結びつくというのですが、どういうことなのか調べてみました。 各企業は、自社に割り当てられた削減枠を達成するため、省エネ設備などの導入を進めなければなりません。そのための設備費が生産コストを押し上げることになります。また、化石燃料を大量に使う製鉄所などでは生産の縮小を余儀なくされるかも知れません。これらのことによって、2020年段階のGDPは 3.2%押し下げられ、結果一世帯当たりの可処分所得が、年間22万円減ることになるのだそうです。 一方、光熱費負担は年間14万円の増となるといわれます。どうしてそのような数字になるのか、内訳は明らかにされていませんが、つぎのような理由によって光熱費負担が増えるのだと考えられます。 太陽光発電の導入促進のため、今年の11月1日より『太陽光発電の新たな買取制度』がスタートし、家庭で生じた太陽光発電による余剰電力が現在の2倍の価格で電力会社によって買い取られるようになります。さらに、民主党のマニフェストでは、太陽光だけでなく、風力などを含めた再生可能エネルギーをすべて電力会社が購入する仕組みを求めていますから、電力会社の負担がますます増えますが、その負担分は家庭に売る電力料金に転嫁されることになるでしょう。 また、揮発油(ガソリン)税について民主党は、2010年に暫定税率廃止を廃止した後、二酸化炭素(CO2)排出量に応じた課税の検討を考えているようです。このようにして電気料金やガソリン代の値上がりなどによって、家計の光熱費負担が増えるということでしょう。 さらに念頭に置かなければならないのは、年間36万円の負担増だけでなく、家庭でも約4分の1の温室効果ガスの排出量の削減を果たさなければならないということです。 そのためには、太陽光発電設備(費用 185万円)を設置し、車は従来型のガソリン車から、ハイブリッド車あるいは電気自動車といった次世代エコカー(従来品との差額40万〜300万円)に買い替え、高効率給湯器(従来品との差額50万円)や省エネ冷蔵庫(従来品との差額2万円)、省エネエアコン(従来品との差額 1.5万円)にする必要があります(9月8日付け産経ニュース)。すなわち、今ある技術を一つの家庭で総動員すれば、最大で 650万円程度の負担増になるということになります。 温室効果ガスの削減は、経済活動の水準の低下と家計費の負担増を意味します。東京大学名誉教授で『もったいない学会』会長の石井吉徳氏の”単純に脱石油というのではなく、浪費型社会を可能な限り改めるのが肝要である”という言葉を思い出します。民社党は、併せてライフスタイルの指針も示さなければなりません。 【用語】 〔可処分所得〕 所得のうち、税金・社会保険料などを除き、個人が自由に処分できる部分。 〔GDP〕 国内総生産のこと。国民総生産から海外で得た純所得を差し引いたもので、国内の経済活動の水準を表す指標となる。 【補記】 政府は9月30日、地球温暖化問題に関する閣僚委員会を開き、2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する中期目標達成に向けた家計の負担額などを新たに試算する方針を決め、25%削減の場合『1世帯あたりの負担は少なくとも年間36万円』とした麻生内閣時の試算は全面的に見直されることになりました。どのような試算が出されるか興味の持たれるところです。 |
||||
|
||||
2009.09.23 | ||||
|
||||
− Copyright(C) WaShimo AllRightsReserved.− |