レポート  ・2つのCD 〜 川畠成道とフジ子・ヘミング   
− 2つのCD 〜 川畠成道とフジ子・ヘミング −

今年の最後の買い物は、2つのCDと、連れ合いと二人だけのイブのための、小さめのクリスマスケーキでした。CDの一つは、 川畠成道(ヴァイオリン)とボローニャ歌劇場室内合奏団によるヴィヴァルディの「四季」、J.S.バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV1043」です。


                  1.川畠成道


川畠成道(かわばた・なりみち)は、いま日本でもっとも注目を集めている新進気鋭のヴァイオリニストです。CDジャケットの帯に、「ヴィヴァルディの生地イタリアで決定的評価を得た・・・」とあります。


成道は、ヴァイオリン奏者、指導者を父に持つ3人息子の長男として、1971年、東京三鷹市に生まれます。ヴァイオリンの道の厳しさを誰よりも知っていた父は、3人の息子たちの誰にも幼年期にヴァイオリンを持たせることはなかったそうです。成道もごく普通の子供と同じように、将棋好きな活発な少年期を過ごします。


しかし、8歳のとき、祖父母と3人で出かけたアメリカへの初めての海外旅行中に起きたアクシデントが成道の運命を大きく変えることになります。


ロサンゼルスに着いた成道は、体調の不調を訴えます。風邪を疑った祖父母は、宿泊先のホテルに医師の往診を依頼し、扁桃腺の診断を受けますが、このとき医師が処方した薬の副作用が原因で、生存率5%という重体の状態におちいります。奇跡的に命を取り留めたものの、後遺症のため見る見る視力が落ちてしまったのです。


それでも将来に向けて前進していくしかない成道は、アクシデントから2年が経った10歳の時、初めてヴァイオリンを手にします。ヴァイオリン奏者を目指すには、あまりにも遅いスタートでした。


しかし、成道は、その遅れを驚くほどの集中力で補い、見る見るうちに実力をつけて行きます。ヴァイオリンを始めて2年後の12歳のとき日本学生音楽コンクール入賞。桐朋学園高校を経て、1990年桐朋学園大学音楽学部入部。同年18歳で日本音楽コンクール第3位。そして、25歳の1996年、英国王立音楽院協奏曲コンクール第1位。


1998年のデビュー当初より通常のコンサートの他に、継続的に国内外で平和・弱者に光を当てるチャリティー・コンサート活動を精力的に行っています。購入したCDに収録されているのは、いずれも馴染みの曲ですが、感情豊かで、とても新鮮に聞こえます。


                  2.フジ子・ヘミング


もう一つのCDは、フジ子・ヘミングの『奇跡のカンパネラ』というピアノ曲集です。「ラ・カンパネラ」など、リストの作品が7つと、「ノクターン」など、ショパンの作品3つが収録されています。第14回日本ゴールド・ディスク大賞、クラシック・オブ・ザ・イヤーを受賞したCDです。


イングリット・フジ子・ヘミング(Ingrid Fujiko Hemming )は、父はスウェーデン人建築家のジョスタ・ジョルジ・へミング、母は日本人ピアニストの大月投網子のもとにベルリンで生れます。


5才の時、両親と帰国。父は開戦の気配の濃い日本から離れ、以来母の手ひとつで東京に育ち、6才から母の手ほどきでピアノを始めます。小学校3年生でラジオに生出演し、天才少女と騒がれ、東京芸術大学在学中に毎日コンクール入賞、文化放送音楽賞など多数受賞します。


30才のとき、ドイツ留学を果たし、ベルリン国立音楽学校を優秀な成績で卒業。卒業後はヨーロッパに在住し、演奏家としてのキャリアを積み、”リストとショパンを弾くために生まれてきたピアニスト”と賞賛されます。


しかし、順調な人生を狂わせる不幸がフジ子を襲います。リサイタル直前に風邪が原因で両耳が全く聞こえなくなり、その後の演奏会はすべてキャンセルを余儀なくされ、次第に音楽界から忘れ去られていきました。


失意の中、ストックホルム(スウェーデン)に移住し、耳の治療の傍ら、子供たちにピアノを教える生活に甘んじながら、欧州各地でコンサート活動を続けます。


2年間ほど全く聞こえなかった耳は、現在、左だけが40%回復しているそうです。1995年、母親の死去を機に30年余りの外国生活に終止符を打ち帰国し、1998年、母校芸大の旧ホール(上野奏楽堂)で再起の公演を行いました。


1999年2月、NHKで制作・放送されたETV特集「フジ子〜ピアニストの軌跡」は大反響を呼び、再、再々放送されました。また、2003年フジテレビ系全国ネットで放送された、愛と感動の特別ドラマ企画「フジ子・ヘミングの軌跡」もやはり大反響を呼び、再放送となりました。


アルバム「奇跡のカンパネラ」「憂愁のノクターン」で、クラシックでは史上初の快挙となる、2年連続「日本ゴールド・ディスク大賞、クラシック・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞、04年「フジ子・ヘミングの奇蹟〜リスト&ショパン名曲集」、そして、05年「フジ子・ヘミング こころの軌跡」で再び2年連続同賞を受賞します。


【参考】本レポートを書くに当たって、下記のサイトを参考にしました。
・ようこそバイオリニスト川畠なりみちの世界へ
   → http://www.narimichi.jp/
・Victor Entertainment 作品詳細 川畠成道(ヴァイオリン) 川畠成道の「四季」
   → http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A014195/-.html
・川畠成道
   → http://mbs.jp/portraits/portraits/2004/2004_5/n.kawabata.html
・フジ子・ヘミング Official Site
   → http://www.jvcmusic.co.jp/fujiko/
・ingrid fuzjko hemming official site
   → http://www.fujiko-hemming.com/
・奇蹟のカンパネラ
   → http://www.jvcmusic.co.jp/fujiko/disco/disc/60123.html

2005.12.28 
あなたは累計
人目の訪問者です。
 − Copyright(C) WaShimo AllRightsReserved.−