コラム  ・ジョウビタキ   
− ジョウビタキ −
このところ吹く風は冷たいものの天気の良い日が続いているので、休日には、刈り残したままになっているあちこちの草刈りに出かけます。隣家とを仕切る自宅裏の法面(のりめん)の草を刈れば、どこからともなく一羽のジョウビタキがやってきます。
 
下の田んぼの土手の草を刈れば、同じように一羽のジョウビタキが現れます。ススキなど冬の枯草は種に成った実をたくさん蓄えています。草が刈られると実が散らばって、食べやすい格好のエサになるのでしょう、啄(ついば)みながら、刈る後をついてきます。
 
ジョウビタキは、雀(すずめ)よりもいくらか小さい、とても可愛い鳥です。メスは体が灰色味のある茶色をしています。オスの頭が銀白色であることから、これを白髪に見立てて、翁(おきな)を意味する尉(じょう)という文字をあてました。
 
尾を上下に振りながら、ヒッヒッヒッカタカタと鳴く声が火打ち石を打つ音に似ていることから『火焚鳥』(ひたきどり)と呼ばれ、ビタキという和名の由来になりました。オスは黒い翼に大きな白い斑があることから『紋付鳥』(もんつきどり)と呼ぶ地方もあるそうです。

 
ジョウビタキ(メス)
− Wikipedia(アップロード者: Alpsdake)より −
   
ジョウビタキには、雀など他の鳥には見られない特徴的な習性があります。一つは、群れをなさず、一対のオスメスであっても非繁殖期は単独生活を行い、縄張りを作って同種を排斥する習性があります。鏡に映った自分の姿にも攻撃を加えるほどだそうです。したがって、ジョウビタキが現れるときには必ず一羽でやってきます。
 
二つめは、人間を怖がらずとても人懐っこいということです。草刈りをやっていると1メートルほどの近くまでやってきます。ジョウビタキは、縄張りを決めるとき、そこに住む人間の人となりをよく観察し、しかと見極めているに違いありません。
 
さて、そんなジョウビタキは、チベットから中国東北部あるいはロシア南東部で繁殖し、非繁殖期になると日本などに渡って来て越冬する冬鳥なのです。2010年12月7日の富山新聞のネットニュースに、10月にロシアの沿海地方で足環を付けて放たれたジョウビタキが、11月富山県氷見市で捕獲されたという記事があります。
 
総距離が 800キロメートルにもなる日本海を、ジョウビタキが一気に渡る幻の『日本海ルート』の確証が得られたというのです。富山から著者の住む鹿児島まではさらに 800キロメートルあります。子供の片手の手のひらにも乗りそうな小さなジョウビタキがこの気の遠くなるような距離をどうやって渡航するのでしょうか。
 
ジョウビタキもツバメと同じように、同じ場所に帰ってくるのかどうかに関心が持たれていて、同じ場所に帰って来ているに違いないという記事のブログも見受けられます。ジョウビタキの平均寿命は4〜5年ぐらいだそうです。
 
毎年同じ場所をめがけて、はるばる片道2000キロメートルもの距離を往復しながら冬を過ごしにくるジョウビタキ。秋元順子さんの歌う『愛のままで・・・』という歌謡曲に『あぁ〜生きてる意味を求めたりしない〜♪』という詩のくだりがありますが、ジョウビタキに生きている意味を問えば何と答えるでしょうか。そんなジョウビタキに寄り添われながらする草刈りをきついなどと思う気にはなりません。
 

2015.01.14
あなたは累計
人目の訪問者です。
 − Copyright(C) WaShimo AllRightsReserved.−