雑感  ’11年頭雑感 〜 嫌消費−ものづくりについて考える   
− 嫌消費−ものづくりについて考える −
例えば、テレビではデジタル化と共に画面が大型化し、3Dテレビが出現しました。モバイル端末ではiPadなどが開発されて販売競争にしのぎを削っています。このように、ものづくりは引き続き高品質化・多機能化が指向されているようですが、これからのものづくりを考えるうえで念頭に置くべき2つのキーワードが今話題になっているように思います。一つのは『嫌消費』で、もう一つは『BOP』です。
 
1.嫌消費(けんしょうひ)
 
最近、10〜20代の若者がモノを買わなくなったといわれます。安い服に無理して買った輸入ブランドバッグを合わせる、いわゆる『一点豪華主義』や、給料の大半をローンに回して車を乗り回す『車ステイタス主義』などがかっこ良いといわれたのは一昔前のことで、最近の若者にとって、お金がないのに無理して輸入ブランド品や車を持つのは、かっこ悪いことらしいのです。
 
自分の趣味と身の丈に合っていて、節約に貢献してくれる、そして皆とかけ離れていない消費の仕方が利巧だというのが最近の若者の風潮だそうです。服は輸入ブランド品よりインターネット通販で買う、レストランやカラオケはクーポン券を利用してできるだけ安くあげる、外食よりは家で手作り料理、身体に悪いアルコールはいらないといった具合で、節約したお金はせっせと貯金に回すわけです。
 
だからといって、最近の若者がおしゃれに無頓着ということではありません。最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで大量生産・販売するファッションブランドやその業態をさすのが『ファストファッション』という言葉ですが(ウィキペディアより)、ユニクロ(日本)、しまむら(日本)、H&M(スウェーデン)、フォーエバ−21(アメリカ)といった、衣料品を安く提供するファストファッションが売れまくっているのはご承知の通りです。
 
車だって、用が足りれば安くて燃費の良いK4(軽自動車)でいい。ベンツやBMW、ポルシェといった高級外車が多く目につく東京・六本木の交差点の風景の中で、最近、K4に乗っている、しかも女の子を乗せている若者の光景がみられるようになったそうです。テレビだって、お笑いがみれたら大型の液晶じゃなくてもワンセグで結構というわけです。
 
すなわち、バブル世代の過剰消費とは対照的な、無駄のない『コンパクトな消費』が最近の若者の消費スタイルであり、『収入があってもその収入に見合った消費をしない傾向』のことを『嫌消費』と呼ぶのだそうです。
 
2.BOP(Base of the Pyramid)
 
直訳すると”ピラミッドの土台”という和訳になりますが、世界の所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指す言葉として使われています。世界の人口約69億人(2010年10月現在の国連推計)のうちの約58%にあたる約40億人がBOPに該当するといわれます。
 
この層をターゲットにしたビジネスをBOPビジネスといい、その市場規模は約5兆ドル(約 400兆円)にも上るといわれます。企業の利益を追求しつつ、低所得者層の生活水準の向上に貢献できるビジネスモデルであり、低所得層にも購入可能な商品を販売して健康を増進したり、新たな雇用を生み出したりするなど、すでに世界のさまざまな企業がBOPビジネスに参入していますが、日本は欧米諸国と比較して、具体的な取り組み事例が少ないのが現状だそうです(ビジネス用語辞典|Wisdomより)。
 
3.これからのものづくりについて
 
不景気が続く中で若者の就職難に加え、非正規雇用の割合が増加する一方です。将来への漠然とした不安が広がり、若者の消費マインドが抑制されるのも当然の成り行きのように思われます。そんな中で、購買意欲を煽ってものを買わせようとする指向のものづくりだけでは、この先行き詰ってしまうのではないでしょうか。
 
商品の開発には、ニーズ(消費者要求)指向の開発とシーズ(種まき)指向の開発があって、シーズ指向の開発によるものづくりが私たちの生活様式の変遷と発達に寄与したのは事実ですが、それぞれが志向する生活様式を考慮した製品をつくって提供するのが、本来のものづくりの基本ではないでしょうか。
 
4.〔補遺〕若者の正規雇用と職業能力開発を
 
若者のことについて是非言及しておきたいのが、若者の正規雇用と正規雇用の下でのOJTによる職業能力開発です。すなわち、正社員として仕事をしながら、技術・技能を身につけ、仕事を覚えることです。消費拡大のためだけでなく、次代を担う労働力の育成と確保のために不可欠なことです。
 

2011.01.05  
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