|
峡の村飛ぶがごとくにオリオン座
餅搗きや電動は餅踊らせて
冬の燈や肉桂瓶は赤きまゝ
門々に落葉焚く日の雨催
黒潮の潮の碧さや石蕗の花
山頭火旅の支度の初霰
早暁の足跡椎葉神楽かな
還暦の祝いの旅や榾の宿
白マスク零れる笑みを隠し得ず
畑焼いて西祖谷山に冬が来る
里山に棲みし秋風いま何処
床入れば寝るなと囃す鉦叩
野仏に届かぬ柿が熟してる
保津川の雨後の濁りや初紅葉
ポンペイに絵葉書と買ふ檸檬かな
稲扱きや父の形見の油差し
黄金の稲溢れたる棚田かな
十月の海の碧さや磁器の市
秋霖や雨読の本も底をつき
竜胆の国を分けたる峠かな
重たげに一期の声やつくつくし
二人居の茹でたる栗を持て余す
ぼろ庵に敵機襲来鬼やんま
マスカット熟るる青さを皿に盛り
夕べ掃き朝掃く小僧萩の花
一村を火の海にして菜殻焚き
ころころと瓜番小屋のにぎりめし
草刈るや父の厩は車庫となり
葛餅や子あやす乳房揺れており
富岡は煉瓦に繭の白さかな
大杉を凌ぐ高さや桐の花
休日の終わりの車窓麦の秋
せめてものメール来ぬ日の落し文
鉄線を愛でて入るや陶器店
望郷やパリ市庁舎の桐の花
厩舎にも花飾りをり花田植
さなぶりや足の濯ぎもそこそこに
訪ねれば花著莪の人懐かしげ
夫婦して幾万回の袋掛
迷ひなきナニワイバラの白さかな
酒あれば晩餐という焼き目刺
土垢や雨ニモマケズ花大根
塗り終えて千の畦ある棚田かな
葱坊主下校の子らの背の高さ
娘母止まり止まりの春日傘
来ぬ人を待ちわびし日の花あしび
三鉄や加速のあとの花吹雪
島立ちを送る四月や大漁旗
スーツ着てこっそりと買う桜餅
八重桜伽藍瓦の厚さかな
大椿父母のなき家を継ぐ
風が吹く家族総出の厩出し
シマ唄に風のやわらぐ石蓴とり
春泥やカッパの手足泥だらけ
引鶴や落暉の照らす特攻碑
(歳旦三つ物)
初売りやわれ先に手の長く伸び
サービスに添えたる福だるま
蝋梅の風あるたびに匂ひ来て
|