俳句  ・ワシモ(WaShimo)の気ままに俳句   


(十二 月)
   
一個だけ逆さに浮かぶ柚子湯かな 
 
オリオンの西に極まり夜警明け
 
研ぐほどに指で確かむ冬の月
 
ねんねこや幾山越えて五木村
 
刃物屋の胡坐語りや年の市
 
神田川夢を語らう湯ざめかな
 
この山に宿は三軒ぼたん鍋
 
茶の花のひとりごちたる懺悔かな
 
窓際の席に落日忘年会
 
見上げれば海峡のごと冬銀河
 

(十一 月)
   
残菊や昭和のまゝの置き薬
 
浄瑠璃の三味に色ある初しぐれ
 
達磨絵を主に迎えて新障子
 
山宿の闇に突き刺す鹿の声
 
   
秋灯し納期遅れの鉄削る
 
寒月や水の滴る鉄の肌
 

小春日やるるるると鉄削られる
 
同窓を語る集いや菊人形
 
トロッコの揺れて歓声谷紅葉
 
(十 月)
 
コスモスやわたしの子牛売られゆく
 
コスモスの風あるごとに囁けり
 
   
夜食喰う旋盤の屑散れしまま
 
お開きはおはら節かなむかご飯
 

秋時雨赤ちょうちんの人となる
 
猿酒や分教場の同期会
 
ローカルの駅ごとにゐる赤とんぼ
 

(九 月)
   
単線の一人降ろして天の川
 
名月や月下の街をひとくくり
 
弾く音の闇を泣かせて風の盆
 
特攻碑鳴き惜しんでるつくつくし
 

(八 月)
   
鋭角に星の流れるスカイツリー
 
小遣いを握りしめた日氷菓子屋
 
新しき嫁の加わり魂迎
 

(七 月)
   
喜劇みてちょっと寄ろうかかき氷
 
雫ごと盛りたる籠や茄子の紺
 
諸島ゆく船の底なる帰省かな
 
溜息に相槌打つや軒風鈴
 
炎天下からす一羽と草を刈る
  

(六 月)
   
梅筵母は小さき人だった
 
おかえりと部屋いっぱいの夏料理
 
訪えば留守番顔のゆりの花
 
桑の実の熟すれどいま母は亡き
 
子のねだるウルトラマンや夜店の灯
  
十薬の花の白さの雨になる
 
水羊羹噂話しは上品に
 
壺屋焼窯の赤屋根仏桑花
 
紫陽花を一輪差して銀座雨
 
要らぬもの雨に流して額の花
  
(五 月)
   
(かんぬき)を外して牛舎夏に入る
 
鶏飯
(けいはん)の汁を多めに夏初め
 
麦秋の果て旅の果て長崎線
 
山宿の蛇の目揃えて梅雨に入る
 
理髪店隣の客も目借時
  
(四 月)
   
こでまりや細腕ママの料理店
 
幸せの身の丈ちょうど郁子の花
 
近道は枳殻の花に埋もれをり
 
藤棚の風に光りをちらしけり
 
よちよちの児をおっかけて葱坊主
  
鬼面の幼を泣かす春祭
 
午後よりは風の繰り出す花筏
 
露天湯の肌に纏わる花筏
 
それぞれに顔の赤らむ花見かな
 
山宿の寝端をたたく春驟雨
  
(三 月)
 
行き先はあなた任せの春の旅
 
鶯のデュエットやがてカルテット
 
太き手の夫がつくる蜆汁
 
ほろ酔うて梯子をさせる朧月
 
マッコリに酔うて新宿雪柳
 
くるくるともぐら威しや春の風
 
卒業のわが娘(こ)にもらう花の束
  
つちふるや海は白帆の東シナ
  
ひょっとこに笑いこけたる田打ち祭
   
ほろ酔いを見送ってママ花の冷え
  
(二 月)
 
春泥や下駄の鼻緒を拭いてやる
 
春燈や小雨をくぐる二人影
 
春めくやきょうの弁当おむすびに
 
買い置きの靴がぴったり春よ来い
 
黒々と潮の流れや島椿
 
ごめんよと口に出せずに麦を踏む
 
田の神の独り夕暮れ野焼あと
 
引鶴や北国に幸多かれと
 
(一 月)
 
開け放つかやぶきの間や寒牡丹
 
峡のむら星に連なる兎道
 
ころころと笑ふ嫁来ておでん鍋
 
水荷浦冬耕の夫は天を打つ
 
わだかまる悔いごと喰らう鮟鱇鍋
 
嬉しさを繭玉にして飾りけり
 
置き水に星々落ちて氷りけり
 
(歳旦三つ物)
 
夢売りの声高らかな二日かな
 
両手で抱え込む福袋
 
一輪の梅の蕾の膨らみて
  

 
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