俳句  ・ワシモ(WaShimo)の気ままに俳句   
                 選 評  
2010年
 
(しぐれ)
  
ゼンマイの壊れて時計小夜しぐれ
 
さよならと心で言ふて初しぐれ
 
音の出ぬ映写が回る秋しぐれ

 
 
(小春、小六月)
  
言いたきを喉で止めたる小六月
 
幸せが分かりかけてる小春かな
 
(大根
だいこん・だいご
 
訪えば吊り大根より首を出す
 
飴色の風となりけり大根干し
 
どっしりと山も大根も桜島
 
大根降るナイヤガラかなやぐら干し
 
海を向く大根やぐらは風の道
 
連峰の山の高さに大根吊る
 
(芒・夜長)
 
人形の目の冴えてゐる夜長かな
 
芒野にわれを閉じ込め六十年
 
来しあとは芒の海に沈みゆく
 
(水泳)
 
泳ぎきり親子河童となりにけり
 
子と泳ぐ休日の父立ち泳ぎ
 
遠泳の列の架け橋桜島
 
(蛍)
 
蛍火を零さぬように持ちかえる
 
宴席の喧騒遠く庭蛍
 
飼い蛍髪を整え人送る
 
饒舌も寡黙となりぬ蛍舟
  
蛍火や子と訪ね来し特攻碑
 
(初夏)

 
夏初め投げ釣り空を切りにけり
  
ユングフラウ窓開放の初夏の旅
 
パレットにブルー一色初夏の空
  
(薔薇)
 
記念日に紅薔薇贈る腐れ縁
 
戸惑いぬ百万本の薔薇もらひ
 
    ナニワイバラ
北新地難波薔薇を活ける店
 
(5月−無題)
  
言いたきを一つこらえて茄子の花
 
田の神も泥顔笑みの田植祭
  
天空に投げて始まる田植え祭
 
さみだれてアカショウビンの声ばかり
 
幸せの数ほど金魚買いにけり
 
(桜餅)
 
宿帳の筆戸惑ふや桜餅
 
病棟の店に置きたる桜餅
 
マニキュアの色より出でし桜餅
 
(4月−無題)
  
飛鳥山足下に淡く花の雪
 
帰り来てみちのくは今花盛り
 
喧騒の町の路地裏エビネ草
 
花冷えや小走りに過ぐ地蔵角
 
午後よりは桜ちらしの雨となる  
 
(東風)
 
東風吹けば駿河に魚の干しあがる
 
夕東風やおかえりといふ妻のゐる
 
強東風やきょうのシネマは座頭市
 
(無題) 
 
花ミモザマリアの祈り慈悲深く
 
梅が香を土産にもらうバスの旅
 
猫の子に居場所取られて忍び足
  

春泥に道ゆずり合う遠野かな
 
鶴帰るわが子の丈も伸びしかな
 
頬寄せぬ紅梅の降る宵灯り
 
(水仙) 
 
水仙に星の連なる日本海
 
清貧や水仙といふ贈りもの
 
(春寒)
 
捨て切れぬ思いの丈や春寒し
 
春寒や君の寝息を引き寄せる
 
春寒や肩書きのない人となる
 
 
 

 
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