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旅行記 ・高浜焼を訪ねて − 熊本県天草市  2012.10
高浜焼寿芳窯
高浜焼寿芳窯(上田陶石合資会社)
熊本県天草地方で焼かれる天草陶磁器には主な産地として、内田皿山焼、高浜焼、水の平焼、丸尾焼があり、良質の陶石が採れたことから焼き物作りが盛んになりました。『第24回天草西海岸陶芸まつり』が開催されていた2012年10月、高浜焼(天草市天草町高浜)を訪ねました。
高浜焼寿芳窯
高浜焼 上田家六代上田伝五右衛門が陶工山道喜右衛門を肥前から招き、村民に窯業を習得させ、1762年高浜皿山に開窯したのが始まりです。質が良かったため、長崎奉行に目を留められ、オランダ向けの輸出品を中心に焼かれました。明治中期に廃窯しましたが、1952年(昭和27年)に陶石販売を行っていた上田陶石合資会社が復興に漕ぎ着けました。白い器肌に呉須で彩られた意匠が特徴で、キリシタン文化を意識したハイカラなデザインで知られています(1)
上田家庄屋屋敷(文化庁登録有形文化財登録指定)
 第7代上田源太夫宜珍の肖像画(上田資料館)
用途としては、高級陶磁器の原料が主であり、超高圧碍子(がいし)、高圧碍子、衛生陶器、タイルなどに使用されている(以上、上田資料館の説明板より)。
  
天草陶石の採掘は代々上田家の事業として、江戸〜明治中期を経てその間陶石脈の探査開発を行い、明治45年(1912年)高浜皿山に馬車軌道並びに自転巻軌道を施設し、本格的な量産体制に入りました。大正11年(1922年)3月に合資会社上田商店を創始したその後、合名会社上田商店と改称し、昭和23年(1948年)5月さらに組織を変更して上田陶石合資会社としました(2)
天草陶石と上田家
天草陶石(あまくさとうせき)は、陶磁器原料として江戸時代元禄年間(約 290年前)から開発され賞用されており、その優れた品質と豊富な鉱量をもって有名で、生産量は全国シェアー三分のニを占め名実ともに日本一の陶石である。『天草陶石』鉱床は、石英粗面岩が熱水作用により『陶石化』したもので、天草下島の西海岸地域(天草町、苓北町)に産する。天草陶石は、単味で磁器化する特徴があり、品位は鉄分の含有量により特等、一等、二等、三等、四等に分かれている。
 天草陶石(高浜焼寿芳窯で撮影) 
上田資料館(上田家庄屋屋敷に併設)
上田家庄屋屋敷庭園
約 600坪の土地に南向きに建てられ、大広間(十七畳)、中ノ間(十二畳)、居間(十二畳)表座敷(十二畳)、奥座敷(八畳)、裏座敷(九畳)、離座敷(十二畳)など、約百畳の広さと部屋数は約二十室にもおよんでいる。 天井は非常に高く、二間半(4.5m)ほどの高さである。家の材料は、シイ、マツ、などの雑木を使用してがっしりと構築され、海からの強い西風や 台風にもビクともせず、長年の風雪に耐えてきた。山を背景に斜面を生かした庭園は、天草の中でも第一級のものである。この様な旧役宅がそのまま現存しているのは歴史的、建築学的にも実に貴重な文化財である。(『上田家の由来』案内板より) 
上田家庄屋屋敷
(文化庁登録有形文化財登録指定)
上田家(東信濃の時代は滋野と称していた)は、大阪城落城後、我が天草、高浜の地に隠栖(いんせん=俗世間を逃れて静かに住むこと)した。天領天草の代官、鈴木伊兵衛重辰(しげとき)は、万治元年(1658年)8月、上田家第二代勘右衛門定正に庄屋を命じた。これが庄屋上田家の祖であり、その後代々庄屋を幕末まで受け継がれた。この建物(上田家庄屋屋敷)は、7代目当主上田源太夫宜珍(よしうず)の時代、文化12年(1815年)に建築されたものである(現在は15代目である)。
窯(寿芳窯内) 
       
天草創磁・久窯
津崎天主堂や大江天主堂をモチーフにした絵柄(久窯)
『久窯』(天草市天草町高浜南)さんの磁器は、陶器と磁器の原料をミックスしてつくっている磁器。したがって、磁器でありながら、陶器の温かさを感じさせるぬくもりのある作品です。天草の歴史・文化を絵付けのモチーフにするなど風土色豊かな作品づくりをしています。
エルエスアイ天草
天草の特産品、縞陶石を加工してつくった工芸品
木目模様の縞陶石は『木目石』は、天草西海岸の大地に息づく魅惑の美石。大樹の年齢を想像させる世界でも類を見ない自然が創造した天然石です。その縞陶石を用いて、床材、壁材、バスルーム、日曜工芸品などを手掛けているのが『エルエスアイ天草』(天草市天草町下田南)さんです。
厳選された縞陶石よりつくられた砥石(といし)
 
天草西海岸陶芸まつり
高浜の町並み。手前ののぼりが『陶房泰』。奥に入って左手に『寿芳窯』があります。 
第24回天草西海岸陶芸まつりのポスター
第24回天草西海岸陶芸まつり
日本一の陶石の産地、天草西海岸(苓北町・天草町)では毎年春と秋、10窯元(9会場)で陶芸まつりが行われています。新作品の展示販売のほかに、絵付けや手ひねり等の体験も実施されています。
■期間:平成24年10月4日(木)〜8日(月・祝)
■会場:苓北町及び天草市天草町の10窯元(9会場)
〔苓北町〕内田皿山焼・工房風・夢幻窯・天竺窯・雲舟窯
〔天草町〕エルエスアイ天草・天草創磁久窯・天草白磁陶房泰・高浜焼寿芳窯・天草唐津十朗窯
とう陶芸まつりののぼり(陶房泰にて) 
      
天草白磁 陶房泰
陶房泰の店内
陶房 泰にて
【編集後記】 
本HPの管理者もその連れあいも陶磁器に興味があって、有田・伊万里(佐賀県)や三川内・波佐見(長崎県)あるいは薩摩焼の美山(鹿児島県日置市)などの陶器市によくでかけています。今回、天草大矢野島の柳温泉に一泊した小旅行の帰りに、天草上島から下島を経て南端の牛深港からフェリーを使って鹿児島に帰るルートを選んだのは、途中、福連木(ふくれぎ)子守唄の里に寄るためでした。天草の陶磁器のことはまったく念頭になかったので、思いもしなかった『天草西海岸陶芸まつり』との出合いでした。『天草陶石』については知っていましたが、その歴史や天草陶磁器について知るきっかけになりました。こうした予期せぬ出合いも旅の楽しさの一つです。天草陶石の本場だけに、白磁の白さに意識がいきました。
    美しい白磁に
    余計な飾りはいらない
 
    輝くような白を
    最大限に引き立てる
    フォルムの追求
    どこまでも清らかな
    白の世界に魅了されながら
    私は、日々土と向かい合う
 
    天草白磁・陶房 泰・中本泰博

       (天草市天草町高浜)
陶房泰にて
   
【参考サイト】
(1)天草陶磁器−Wikipedia
(2)天草陶石と上田家の歴史(高浜焼寿芳窯ホームページ)
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