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旅行記 ・下甑の風景− 鹿児島県薩摩川内市  2011.12
手打湾
湾曲した砂浜が美しい手打浜
鹿児島県薩摩半島の約38km西方の東シナ海に浮かぶ甑島(こしきじま)列島は、上甑島・中甑島・下甑島の主なる3島と、付属するいくつかの島からなります。その下甑島の手打(てうち)地区で伝承されている年越し行事『トシドン』を見学に行ったのは、2011年の大晦日のことでした。その行事は夜になって行われるので、昼間は島内観光に連れて行ってもらい、手つかかずの自然、奇岩が独特の様相を呈するダイナミックな断崖、藩政時代の面影を今に伝える武家屋敷通りなど、下甑島の風景を写真におさめました。
武家屋敷通り
武家屋敷通りの佇まい
手打地区は、甑列島の最南端に位置し、三方を海に囲まれています。地区の前方には約1qの砂浜が続く手打湾、後方には約37万uの水田を擁しています。手打の地名について、源平の合戦に敗れた平家の落人がこの地に流れ着き、『ここは良い所だ』と言って『手を打った』ことに由来するという伝説があるそうです(1)
大晦日の日、正月飾りの準備でしょうか?
明治から昭和の初期にかけて、甑島の中では『手打1000軒、里1000軒』(里は上甑島にある集落)といわれ、島内最大の集落として、約4000人が居住していましたが、現在は、世約430世帯・人口約820人が住んでいます。特産品として海洋深層水を利用した水産加工品、焼酎、みそなどの地場産品に、夏場は、観光遊覧船やスキューバダイビングなどを楽しむことができます(1)
丹念に積み上げられた玉石垣と植栽が往時を偲ばせています。
薩摩藩は、鶴丸城(鹿児島市)を本城とし、領地を外城(とじょう)とよばれる113の行政区画に分けて統治し、武士団を領地内に分散して統治に当たらせました。麓(ふもと)集落と呼ばれるミニ城下町が形成され、その中心に地頭の居館である地頭仮屋が置かれ、ここで外城の行政が行われました。手打集落のほぼ中央の旧道中に、約700メートルに及ぶ旧武家屋敷通りあります。
 下甑郷土館
武家門構えの下甑郷土館
『下甑郷土館』は、昭和57年(1982年)に、武家屋敷の町並みが続く旧道のなかほどに建設された資料館で、展示室には先人達が使用していた日常の生活用具や農林漁業の作業用具、古美術点など1200点余りが陳列されており、この地域の歴史的文化を知ることができます。
歴史民俗資料館内の陳列
展示されている小型和船は、下甑の海岸線で漁労していた『薩摩型ミヨシ船』だそうです。帆面積が小さく、ある程度の風が吹かないと帆走に適さないため、櫓こぎによる漁労が多かったと思われます(2)。浮子桶やトマ、櫓等の漁具がたくさん展示されています。
先人たちが使った民具や漁具
家並み
たわわにミカンが実った民家
甑島では沿岸流が激しいため砂浜ができにくく、手打浜の砂浜は珍しいものとなっています。手打浜に砂が堆積できたのは、背後に風化する花崗閃緑岩体が多量にあったこと、その土砂を運ぶ河川があったこと、津口山が約一キロも突き出ていて、激しい沿岸流を食い止め、砂の体積を容易にさせたことなどが考えられるそうです(1)
手打湾近くの窓のない民家
円弧を描く手打浜の西半部分(西地区)に沿う海辺の集落では、防風・防砂および坊潮のために開口の無い壁や瓦が吹き飛ばないようにするためタールで塗り固められた屋根、あるいは高いブロック塀を施した家がたくさん見受けられます。
バス停と手打浜
甑島には、2012年3月まで、薩摩川内市営バスが運行されていましたが、同年4月から薩摩川内市営バスを引き継ぐ形で『薩摩川内市甑島コミュニティバス』が運行されています。ちなみに、上甑地域の4路線は『甑ふれあいバス』、下甑・鹿島地域の4路線は『甑かのこゆりバス』と命名されています。
風余けの高いブロック塀がある民家
上の写真の道路を行き着いた手打浜の西端に、下甑島離島体験宿泊施設『竜宮の郷(りゅうぐうのさと)』(自治体・第三セクター経営)があります。各種団体の研修を兼ねた宿泊施設で、和洋両タイプの宿泊室を備えています。下甑にはウミガメが来るので、浦島太郎の昔話に出てくる竜宮城にちなんで命名されたそうです。
『竜宮の郷』付近から見た2012年元旦の朝焼け
釣りバカ日誌9
『釣りバカ日誌9』ロケ地の案内板
馬場(小林稔侍)は、鈴木建設の営業部長という職を捨てて、茜(風吹ジュン)の実家のある下甑手打で息子の誠(西谷卓統)ともども三人で暮らすことになった。結婚式の最中、ハマちゃんと社長のスーさんは誠を連れてこの手打浜に釣りに出る。誠に投げ釣りを教えるハマちゃん。引き籠りだった誠は次第に打解けてゆく・・・。more↓
手打浜
おふくろさん歌碑
森進一さんのヒット曲『おふくろさん』の歌碑
鹿児島市出身の歌手森進一さんの大ヒット曲『おふくろさん』の歌碑。森さんと作詞した川内康範さんも参加して、平成11年(1999年)に除幕式が行われました。森さんの母、森内尚子さんは下甑村出身で、昭和48年(1973年)に47歳で亡くなりました。碑文は、川内康範さんの直筆によるもので、歌碑に近づくと森さんの声で『おふくろさん』の歌が流れます。
瀬尾観音三滝
第一と第二の滝
瀬尾(せび)観音三滝は、55メートルの高所から三段に落下し、祠堂には聖観音像を安置しているところからそう呼ばれるようになりました。『瀬尾の観音三滝の水は諸人万人の薬水』とうたわれ、昔から地元の人たちに親しまれてきました。また瀬尾崎一帯は国の天然記念物に指定されたヘゴの群落があります。薩摩川内市下甑町青瀬
第三の滝
長浜港
下甑の玄関口・長浜港
長浜港は、下甑島の中央部に位置する港です。いちき串木野港を出航した高速船シーホークは、上甑島の里港に寄港したのち長浜港に入り、本土と上甑島・下甑島をつないでいます。以前は、さらに南の手打港まで行っていましたが、2012年4月、手打港への寄港は廃止されました。また、フェリーニューこしきも長浜港止まりになりました。
 
しんきろうの丘
しんきろうの句碑
今のように自動車道もなく徒歩で山越えをしていた頃の早春のある日、青瀬在住の故平田医師が瀬々野浦へ往診の道すがら、はるか水平線の彼方に林立する白色のビル街を認めて、”往診の道すがら見ししんきろう”と詠んだので、しんきろうの丘と呼ばれるようになりました。このしんきろうは、遠く中国大陸の都市ではないかといわれています。碑文は女流書家・町春草の揮ごうによるものです。高台の丘にあり、この場所からナポレオン岩を望むこともできます。東シナ海へ沈む夕日もきれいだそうです。
ナポレオン岩
ナポレオン岩
下甑島の中央西側、瀬々野浦の沖合にある高さ127メートルの奇岩は、横から見るとナポレオンの顔に見えることから『ナポレオン岩』と呼ばれるようになりました。この近海は奇岩や断崖が連なる自然が豊で、海は透明度が高く綺麗で、釣りのスポットとしても知られています。
しんきろうの丘からの眺める
 鹿島断崖
夜萩円山公園から望む鹿島断崖
下甑島の北部を占める鹿島町の西海岸は、風と波に削られてむき出しの岩肌となった高さ200mの断崖がおよそ16kmにわたって続きます。綺麗な横じまの地層と海際に、奇岩や大岩の点在する風景は、そのまま自然のダイナミックなアートです。
横じまの地層は綺麗で圧巻です
下甑島最北西端の円崎岬にある標高165mの円山に整備されている夜萩円山公園(よはぎまるやまこうえん)の展望台から、鹿島断崖の最大級の景観を見れることができます。
海ぎわの奇岩や大岩
釣りバカ日誌9
鈴木建設営業部に新任の部長として配属されてきた馬場(小林稔侍)は、実はハマちゃんこと浜崎伝助(西田敏行)と同期。真面目で仕事一筋の馬場は、家庭の方では妻と離婚し、引き籠りの息子と2人暮らしで、親子関係もうまくいってない。そろそろ再婚を考える馬場は、行きつけのスタンドバーのママ、茜(風吹ジュン)が好きで、茜も馬場に好意を寄せているが、バツイチの馬場は息子のこともあって、茜にプロポーズをいい出せないでいる。そんな馬場が、ハマちゃんの後押しで、意を決して結婚を申し込みに行くと、茜は、あす店をたたんで郷里の”せんだい”に帰って病弱な母親と二人暮らしをするといい出す。落ち込んで気の晴れない馬場は、社長(三國連太郎)のお伴をして、鈴木建設が請け負った鹿児島県川内(せんだい)市(現薩摩川内市)に建設されるまごころ文学館の地鎮祭に行くことになった。地鎮祭を終えて市内にある新田神社に祈願にいく一行。と、馬場は風呂敷包みの仕出しをさげて神社の階段を上ってくる茜とバッタリ再会する。仙台の田舎に帰ったはずの茜に、僕に嘘をついたのかと問い詰める馬場。「ここは、せんだい(川内)よ」という茜。一度は諦めたはずの恋の炎が再燃した馬場は、ついに茜に結婚を申し込む。しかし、茜は病弱な母親を東京に連れていけない。仕事をとるか、恋をとるか。馬場は東京に帰って、息子の誠(西谷卓統)に「好きな人がいる」と告白し、一緒に鹿児島の甑島にいって暮らさないかとたずねる。誠は意外にも「いいよ」と答える。下甑島手打の茜の実家で結婚式が執り行われている最中、ハマちゃんと社長のスーさんは誠を連れて手打浜に釣りに出る。青い空と海、白い砂浜・・・、誠に投げ釣りを教えるハマちゃん。誠は次第に打解けてゆく・・・。地味な女性を演じる風吹ジュンの控えめな演技と男の苦悩を演じる小林稔侍の演技も良い・・・。(1997年9月9日公開)
【参考サイト】
(1)手打地区の紹介(手打地区コミュニティ協議会)
(2)串木野の小型和船(帆船)ようこそ東シナ海の玄関口、串木野へ
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