旅行記 | ・九州のひなまつり(1) − 天領日田 |
日田(ひた)市は、大分県北西部の福岡県境に位置する人口6万2000人の市です。九州三大美林の一つとして有名な日田杉に周囲を囲まれた日田盆地を三隈川が流れます。 「天領日田」・・・ 日田市は、徳川時代、「天領」(幕府の直轄地)に編入され、代官所の所在地として重要な地位を占めました。当時は、九州随一と云われるほどの繁栄をきわめ、「小京都」と呼ばれるほど京文化が発達していました。 「水郷ひた」・・・ 市街の南を豊かな水をたたえて三隈川が緩やかに流れています。また、あちこちで水路が見られる山紫水明の地です。三隈川では5月に鮎漁が解禁されます。河畔は、5月の花火大会、鵜飼、屋形船遊船などで大いににぎわいます。 「日田温泉」・・・ 三隈川河畔にはたくさんの温泉ホテルや温泉旅館がたち並び、三隈川の景色を望みながら展望風呂に入れます。湯がゆったりとからだを包み込み、旅の疲れをいやしてくれます。 (旅した日 2003年3月) |
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享保雛(享保19年)1734年 |
廣瀬資料館 廣瀬家は、草野家、山田家と共に天領時代に掛屋(金融業)を営んだ有力な商家でした。また、明治維新の逸材を多く育てた広瀬淡窓の生家でもあります。当時を物語る貴重な資料や古文書、生活道具などが展示してあります 「掛屋とお金と雛人形」 掛屋とは、幕府の公金を扱う金融機関のことです。九州の各天領から上がる税金は、すべて日田の掛屋に集まりました。その金は一年間日田に留(と)まったので、その間に大名に貸し付けたり、公共事業に貸し出して利益を上げていました。日田の旧家に古い雛人形が多く残るのは、そうした掛屋の利益背景があったのだそうです。 「いろいろな雛人形とその特徴」 (1)寛永雛・元禄雛(享保より前の雛) 寛永(1624〜1643年)雛や元禄(1688〜1704年)雛など、享保より前の雛は、小型であることが特徴のひとつです。廣瀬資料館に展示してある一対の元禄雛(写真下)も、小さな雛です。 |
廣瀬資料館(上左)と資料館中庭(上右)・・・鳥寄せ用に枝にミカンが刺してありました。 |
元禄雛(1688〜1704) |
享保雛 |
(2)享保雛 江戸時代中期、享保年間(1716〜1736)頃に流行したと言われる内裏雛です。金襴や錦をつかった優雅で豪華なのが特徴です。元禄雛を経て、雛人形は1700年頃より徐々に豪華になり、大型化して行きます。等身大のものも作られたようです。しかし、将軍吉宗の享保の改革(1716〜1745)により、以後は豪華なものは製作禁止となったと云われています。享保雛は、1750年頃全盛期を迎えるが、有職雛や古今雛の登場とともに影が薄くなって行きます。 (3)有職(ゆうそく)雛 享保雛などの衣裳は、公家風ではありましたが、公家装束を正しく反映していませんでした。1755年頃に正確な装束を雛に着せたものが有職雛の起こりだそうです。有職とは、朝廷や武家の儀礼・行事・官職などの故実(儀式・作法・服装などのさだめ・ならわし)に従うという意味です。 |
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原次郎左衛門家 (味噌醤油蔵の合名会社まるはら) 雛人形の中で最も貴重で豪華で数が少ないと言われている「次郎左衛門雛」(約200年前作)を、市の都市景観賞を受けている商家(写真下)の母屋で公開。 有職雛は、公家中心に用いられた雛人形で、原次郎左衛門家の有職雛(写真右上)は、京都より買い求めたもので、九州では島津家のものに匹敵する雛とのことです。 (4)次郎左衛門雛 市の都市景観賞を受けている商家 |
有職(ゆうそく)雛 「次郎左衛門雛」(約200年前・江戸後期作) |
原次郎左衛門家では、数の少ない貴重なものであることと、フラッシュによる劣化を防ぐため、雛人形の写真撮影を禁止されています。今回、社長さんの直々のご案内を頂きながら、特別に撮影を許して頂きました。有難う御座いました。尚、原次郎左衛門家では、ひなまつりの期間中、HPによるライブを実施されています。原次郎左衛門家のHPアドレス→http://www.soysauce.co.jp/ |
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古今雛 |
春光園 三隈川の鮎を、多彩な料理法で楽しませてくれる天然鮎料理の専門店。明治時代の八女のお雛様などを公開しています。 隈紺屋町の旧商家らしい家の壁に、日隈小学校の子供たちが作成した「ひなまつり絵馬展」の作品が展示してありました(写真下)。 「ひなまつり絵馬展」の作品 |
(5)古今雛 1765年頃に考案製作された雛で、有職雛を模倣しているが、女雛は享保雛のように宝冠を載せています。 日田市の位置 |
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日本丸館 | 天領ひな陣屋 | 嶋屋本家 |
江戸時代より現在まで続く県内最古の薬舗「岩尾薬局」。万能薬「日本丸」で有名でした。白壁、銅板屋根の木造三階建ての風格ある建物です。 |
創業百六十年の老舗日田醤油。天領日田の町、豆田に天保持代-の古いお雛様がたくさん飾られています。 | 「ひな三代ちょっと見展」と題し、明治から親子三代にわたる雛人形と、100点ほどのおきあげ雛(押し絵雛)を展示してあります。 |
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「草野本家」 掛屋を営んだ有力な商家。建物は18世紀のもの。300年の歴史をしのばせる雅やかな雛人形を年に4回公開。写真撮影はできませんでした。(写真上左) 「人力車」と「白馬の馬車」 (写真下左と下中) |
「水郷ひた」の水路 日田は水郷です。家と家の間に水路があります。(写真上右) 「天領日田資料館」(写真上中) 「お菓子売り」 江戸時代のお菓子売り屋さんが、当時の雰囲気をかもし出しています。(写真下右) |
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【備考】本ページの作成において下記を参考にさせて頂きました。 (1)日田市経済部観光課・日田観光協会の「天領日田 おひなまつり」のパンフレット (2)本物志向の人形専門店、人形処橋本屋のHP 『人形処橋本屋:時を語る人形たち』→http://www.oningyo.com/ |
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