熊本方面から大分県竹田市街地へ入る国道57号線を
市街地入口手前で右折し、やがて曲がりくねった細い道を進むこと20分余。
『白水ダム』の名で親しまれている
美しいダムは、大野川上流・大谷川の人里離れた山あいにあります。
竹田市片ケ瀬から下流の緒方町軸丸までの水田を潤す
『富士緒井路』(ふじおいろ)の水量不足を解消するために、1934年(昭和9年)4月に着工し、
1938年(昭和13年)3月に完成。
井路(いろ、いみち)とは、農業用水など地域に必要な水を供給する水路のことです。
日本の河川法では、堤高が15m以上のものを
ダムとしているため、堤高が14.1mの白水ダムは
正式にはダムではなく、正式名称を
『白水溜池堰堤(はくすいためいけえんてい)・水利施設』といいます。
大分県の農業土木技師であった
小野安夫(1903〜1993年)の設計・監督によるもので、
越流型の重力式コンクリートダムで、
表層は石造となっています。
堰き止められた水が落下する時、
この地方特有の柔らかな阿蘇溶結凝灰岩の川底が落水の圧力に
耐えきれないと判断した小野安夫は、
水流を弱める工夫をしました。
堰堤(えんてい)の両端部に、それぞれの地形に応じて、
右岸端部には武者返しの曲面流路、左岸端部には階段状の流路を
設け、水流が強まると左右の流路からの水流が、
中央部の水流を弱めるようにしました。
そして、堰堤の転波列を越えて流れる水流や
左右両端の流路を流れ出る水の流れが作り出す模様。
その美しさは、
訪れた人々を感動させるばかりです。
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『農耕への熱い思いがなければ決して完成をみなかったであろう。
・・・・・ 設計者と豊後石工の英知と努力、
それにもまして芸術性を取り込んだ美的センスには頭の下がる思いがする』
と、歴史と文化を考える会の現地案内板にあります。
1999年(平成11年)に、国指定重要文化財に指定されました。
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