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旅行記 ・田之浦山宮神社ダゴ祭り − 鹿児島県志布志市  2011.02.06
田之浦山宮神社ダゴ祭り
『ダゴ花』が奉納された田之浦山宮神社の社殿。祭りの始まる前に参拝です。
祭りが始まる前の山宮神社
その年の豊作を祈念する農耕の祭り、いわゆる予祝行事です。氏子である田之浦地区の12集落から1本ずつ『ダゴ花』を作って持ち寄り社殿に奉納します。ダゴ花は、2mほどの太い青竹の先端にワラを巻き付け、それに300本以上の団子の串をさし、キンカンやセンリョウなどで彩(いろど)りを添えたものです。奉納されたダゴ花の争奪が祭りの名物となっています。
  山宮神社とダゴ祭り 
田之浦山宮神社は天智天皇を祭神とする和銅2年(709年)創建の神社で、社伝によると、東北にそびえる御在所岳(標高530m)を天智天皇の御廟とし、里宮に子の大友皇子を祭っていたのが由来だそうです。この神社で毎年2月1日(現在は2月の第一日曜日)に行われる『ダゴ祭り』(県指定無形民俗文化財)は、鹿児島県下で一番早い春祭りとして知られています。
奉納したダゴ花を見つめる田之浦小学校の児童たち
神事が終っていよいよ神舞(かんめ)の奉納。その前にお清めのお祓い。
彦舞
神舞が始まると、先祓いの神として先ず、『猿田彦』が現れます。
天狗の様相をした猿田彦
すなわち、この神は先祓いの神であり、彦舞(猿田彦命の舞)は神舞の初めの部分で舞われ、この舞によって周囲いっさいが祓い清められます。日本書記には、猿田彦命は、鼻が長く、目が赤くホオズキのように輝いているとあります。
   猿田彦
『彦舞』の”彦”とは、『猿田彦命(さるだひこのみこと)』のことです。猿田彦命は、天照大神(あまてらすおおみかみ)の孫神の『瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)』が、葦原中津国(あしはらのなかつくに=日本の国土)に天下る途中、先導した神です。
猿田彦は周囲いっさいを祓い清める神です
正面を清め左右を清めます。
 
 児鬼神舞
小学生が舞う『児鬼神舞(こきじんまい)』
 
 帯舞
長い紅白の帯を操る『帯舞』
 
薙刀舞
薙刀(なぎなた)を操る力強い所作の『薙刀舞』
 
田の神舞
大きなメシゲとスリコギ、そしてすずめ威しの道具を持って現れた田の神
田の神の道具が欲しい田吾作
首尾よくメシゲを手に入れた田吾作は、代掻きのときメシゲで土を平にする仕方を田の神に教わります。メシゲの次はスリコギが欲しくなり、首尾よくこれも手に入れますが、最後のすずめ威(おど)しの道具だけは、これを手放すと、田の神も田の神でおれなくなるというので、もらえませんでした。
  田の神と田吾作の寸劇 
この『田の神舞』は、田の神と人間の田吾作が鹿児島弁で会話を交わす寸劇であり、会場の笑いを誘います。大きなメシゲとスリコギ、そしてすずめ威(おど)しの道具を持った田の神に出くわした田吾作は、その道具が欲しくて、のっそりのっそり田の神の後を付けまわし、あれこれ声をかけ取り入ります。
このメシゲが欲しいとな!!
田吾作は首尾よくメシゲ(代掻きで土を平にする道具)をもらい取ります。
 
鉾舞
舞台に挿(さ)れた鉾は”神の力”を象徴しています。
鉾を取るのに難儀する神
舞は、神が舞台に挿してある鉾を抜き取るのに時間をかけて難儀の様子を舞います。これは、神とてその力を得るのはそうた易いことではないことを意味しています。鉾を得た神は一段と力強い形相です。
この『鉾舞(ほこまい)』は、舞台に現れた神が、舞台に挿してある鉾を抜き取り、それを獲得するまでの様子を舞いにした神舞です。鉾は、”神の力”を象徴しています。
ようやく鉾を取り出した神
鉾を得て力強くなった神
 
ダゴ花の争奪
神舞が終ると、ダゴ花が見物客の前に担ぎ出され、用意ドン!で争奪です。
無病息災・五穀豊穣を願って配られるダゴ花のダゴ(団子)は、焼かずに食べたり、豊作を祈って床の間に飾ったりします。また、ダゴを抜いた串は、もぐら除けや虫除けに効果があるということで田んぼの水口に挿(さ)したりするそうです。 
ダゴ花の争奪が祭りの名物となっています。
 
【編集後記】
過疎化、高齢化で担い手が減少し伝統芸能の伝承が年々難しくなる環境にある中、『ダゴ祭り』では、田之浦小学校の児童らが『ダゴ花』作りを手伝っています。児童らは6年前から、ダゴ花奉納に加わっており、校区のお年寄りの協力をもらいながら、全校児童18人が役割分担し、米粉からダゴ(団子)を作りました。出来上がった紅白のダゴを竹串に刺し、長さ2mの青竹の先端に飾り付けてダゴ花を作り上げます(2011年2月5日の南日本新聞より)。また、田之浦中学校の生徒も奉納しており、今年は、12集落からのものに加えて計14本のダゴ花が奉納され、社殿を飾りました。素晴らしい伝統芸能をみさせて頂くたびに、末永く後世に継承されて欲しいものだ思われてきます。
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