レポート  ・NHKスペシャル「苦悩する家電の巨人」から   
− NHKスペシャル「苦悩する家電の巨人」から −
 2002年8月18日(日)のNHKスペシャルは、「苦悩する家電の巨人〜松下電器再生への模索〜」と題するもので、その内容は、「従業員27万人、売上げ高7兆円の松下電器産業が、抜本的な構造改革に取り組んでいる。20世紀のビジネスモデルから脱却し、ヒット商品を生み出すことができるか。改革の現場を密着取材。」(NHKホームページの予告文から)でした。


 この番組を見て、理解したことを以下にまとめました。


(1)新しいビジネスモデル〜「二番手商法」から「垂直立ち上げ」へ
 製品ごとの「事業部制」と強力な「系列家電販売店網」による大量生産・大量販売力を使った「二番手商法」が松下電器従来のビジネスモデルでした。他社の新製品発売を見てから、大量生産・大量販売してシェアを勝ち取る方法でした(図1)。


 しかし、消費者の好みが多様化しニーズが量から質に移るにしたがって、商品のライフサイクル(モデルチェンジのサイクル)が短くなり、そして販売の主力は小売店から量販店に移りました。ヒット商品によって販売シェアを勝ち取ったナンバー・ワン(一番手)だけしか勝ち残れない時代になりました。そこで、新しいビジネスモデルとして、「垂直立ち上げ」の取り組みが開始されました。発売と同時に攻勢をかけて一気にトップシェアを勝ち取ろうというものです。販売流通の主体は量販店です。販売量にかげりが出てきたところで新しいモデルを再度「垂直立ち上げ」します。それを続けることによってトップシェアを守り続けるわけです(図2)。


           



          



(2)流れ生産方式からセル生産方式へ
 一方、生産工場では、商品ライフサイクルの短期化への対応と仕掛在庫の排除をねらって生産方式が、従来のベルトコンベアによる流れ作業方式からセル生産方式(屋台方式とも呼ばれる)〔参考1〕へと変更されました。


 
〔参考1〕セル生産方式(屋台方式)
 作業担当者が部品の組立、検査までのすべてを一人で完成させる生産方式です。ベルトコンベアによる流れ作業方式では、製品モデル切り替え時のタイムラグによる仕掛在庫が相当量になり、またラインの組み替えに時間とコストがかかります。屋台方式では、作業者の仕事への責任感、やる気、働きがい意識、生産意欲が高まり、流れ作業に比べて生産が上がると言われています。2001年5月12日(土)に放映されたNHKスペシャル「常識の壁を打ち破れ──型破りな生産方式による工場改革」では、鳥取サンヨーの工場改革が紹介されました。ベルトコンベヤ方式から屋台方式への転換は、最近、他の多くの部品組立工場でも行われています。

(3)「破壊」と「創造」の経営改革
 松下電器は、「破壊(構造改革)」と「創造(成長戦略)」をキーワードにした経営改革をスタートさせました。終身雇用を維持しつつ、独創的な製品を産み出す体制を築くという従業員30万人企業の取り組みは、21世紀の日本型経営のスタンダードを作り出す実験場としてあらゆる企業から熱い視線が注がれているということです(2002年4月20日(金)放映のNHKBSウィ-クエンドスペシャル予告文より)。




  2002.08.18 
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