雑感  ・'08年頭 〜 政党の論議のあり方について思う   
− '08年頭 〜 政党の論議のあり方について思う −
昨年(2007年)の後半あたりから、『二大政党の苦悩』『民意はどこへ』と言った新聞記事やテレビ番組の見出しが目立つようになりました。わが国の外交姿勢が問われ国益を左右する問題である『テロ対策特別措置法』や国民生活に密着した問題である『年金5000万件名寄せ』等々の問題が未だに解決の糸口すら見つからず、国政は停滞し切っています。
 
7月の参院選で民主党が第一党となり、三分の二の議席を自民党が占める衆院との間で、いわゆる国会のねじれ現象が起きた状態にあります。これは是々非々で政権交代が行なわれる健全な二大政党制の実現を予兆させる現象として歓迎される一方で、与党の提出した法案の審議が以前のように進まなくなり、会期末を目前にしながら法案が一本も成立していないという状況に陥りました。
 
このような国政の停滞を打開しようと突然降って沸いたのが自民党と民主党の大連立事件でした。ネット検索してみると、この大連立については、1930年代の大政翼賛会への集結を思い出させる、議会制民主主義の放棄・破壊であると言ったような意見が多ったようです。
 
国政が停滞しているのは、問題の中身の論議より、党利党略が先に立った批判のための批判に政党の論議が終始しているからだと思われます。宙に浮いた5000万件の年金記録について当初政府は、コンピュータ処理システムを開発して一年で名寄せするとしていたのに対して、それが無理だという見解に変わりました。そのとき野党が追及したのは、もっぱら厚労省大臣や総理の責任問題であり、自民党の公約違反についてでした。
 
                        
責任追及も大切ですが、国民が欲しているのは、なぜ無理なのか、ではどうしたら名寄せが一日でも早く完了でき、完了は何時ごろになるのか、名寄せが無理だとすればどのような方策をとるのかと言った中身の論議です。
 
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著者は、大手メーカで機械設計に携わっていた時代に、技術者としての修羅場を何度か経験したことがあります。30歳代前半のことですから、もう20数年前のことになります。
 
設計技術者として一人立ちできているかいないかという頃、東北のある会社(客先)に、一人、据付試運転のスパーバイザー(監督者)として放り出されました。数ヶ月かけて据付が完了した機械(当時で数億円規模の製造設備)の試運転が始まりました。
 
慣らし運転から始め、徐々に運転速度を上げていきながら各部を動かして、機械の動作を確認していきます。やがて、最高速度に達するとあたりに緊張感がみなぎります。緊張が最高潮に達したそのとき、もっとも重要な部分である駆動系が大きな異常音を立てて事故を起こしてしまいました、ドライブシャフト(駆動軸)が飴のように曲がり、機械本体の重要部品のいくつかが損傷しています。
 
事故を起こして無残な形で停止したままの機械。これが動かないことには生産ラインは止まったままです。休業状態が長引けば、何億円という生産保証の請求もされかねません。そんな現実を目の前にして、事故の責任が誰にあるかなどの論議をしている余裕などありません。
 
設計、製造、客先、下請け業者、課長、部長などといった立場を超えて、まず事故の原因を追求して、部品を作り直し、購入部品を再手配して組み立てて、一時間でも早く復旧しなければなりません。責任問題云々は、その後に論議されるべき問題です。
 
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党利党略の、批判のための批判に終始できるのは、たとえば年金問題の由々しき状況が、事故を起こした無残な形の機械を目にする時のようには緊迫感を持って実感されないからではないだろうかと著者には思えてならないのです。
 
技術者としての経験からもう一つ言いたいのは、トラブルが発生したとき、色眼鏡を外してあくまで客観的な立場に立って、技術者としての澄んだ目と純粋な心で状況を把握して対処しなければならないということです。
 
穴より大きい軸は所詮その穴には入りません。だれが何と言おうが、いくら『口八丁、手八丁』を尽くそうが、入らないものは入らないのです。同様に、名寄も本来一年でできるものであればできるでしょうし、本来できないものであれば、だれが何と言おうと、できないものはできないのです。
 
昨年(2007年)6月の、時の厚労省大臣の『一年で名寄せできる』という発言は、どのような客観的かつ合理的な状況把握があっての発言だったのでしょうか。希望的観測や政治的判断での発言であったとすれば、問題を先延ばしにし、混乱を助長するばかりの結果にしかなりません。
 
どうでしょうか、一度、政権交代を実現してもらってみては。そして、政策の中身についての、対話を通じた是々非々の論議によって政策がすみやかに決定されるシステムを確立して欲しいと思います。国民のためになる政策であれば野に下ることも覚悟してそれを主張し実現するぐらいの政党政治の土壌ができて欲しいという思いです。
 

  2008.01.02 
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