俳句鑑賞 | ・尉鶲(ジョウビタキ) |
− 俳句鑑賞・尉鶲(ジョウビタキ) −
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わが家に飛来してきている一羽の尉鶲(ジョウビタキ)。ジョウビタキは、チベットから中国東北部あるいはロシア南東部で繁殖し、非繁殖期になると片道2000キロメートルにも及ぶ距離を飛んで日本などに渡って来て越冬する冬鳥です。毎年同じ場所に帰って来る(飛来してくる)に違いないという説もあるそうですから、愛おしく思われて仕方ありません。 さて、尉鶲(ジョウビタキ)は、単に鶲(ヒタキ)あるいは火焚鳥(ヒタキドリ)、紋付鳥(モンツキドリ)ともいい、俳句では秋の季語になっています。俳句歳時記に次のようにあります。 尉鶲は雀大で、腰と尾が錆赤色で美しく、黒い翼には大きな白い班(はん)があるので『紋付鳥』ともいう。人を恐れず、森・畑・庭園などに多く、尾を上下に振ってヒッヒッヒッカタカタと鳴く。その鳴き声が火打ち石を打つ音に似ていることからその名があるといわれる。(出典:角川書店・合本俳句歳時記第三版) 例句を調べてみると沢山の句が詠まれていて、人々に尉鶲(ジョウビタキ)がいかに親しまれてきたか伺い知ることができます。例えば、 こころあてなくして鶲来てくれし 阿波野青畝 よき話鶲つげ来よ南まど 上村占魚 一むらの刈安に声稲鶲 飴山實 一人で事足る鶲啼く 種田山頭火 人は死に人は鶲とあそびけり 斎藤玄 今年また紋見せに来し鶲かな 鷹羽狩行 前略と庭先に来し鶲かな 鷹羽狩行 咥(くわ)へゐるもの見せに来し尉鶲 後藤比奈夫 寝正月鶲を欲れば鶲来る 橋本多佳子 尉鶲かの世の径のごとくゐる 能村登四郎 尉鶲ほのかな老いを置いてゆく 山田みづえ 声でわかる鶲の機嫌空模様 津田清子 恋しさの鶲となつて亡父母よ 三橋鷹女 朝時雨鶲を庭にのこし去る 加藤秋邨 風と来て風が連れ去る夕鶲 加藤燕雨 |
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