コラム  ・鵙の早贄(もずのはやにえ)   
 
− 鵙の早贄(もずのはやにえ) −
2021年(令和3年)の立春は2月3日(日)はでした。立春に先立つ4日前の1月30日、春の気配を探しに桜の蕾にカメラを向けていたら興味深いものを見つけました。桜の小枝に小魚が形をくずさずに上手に刺され、日干しにされているのです。
 
これは鵙(モズ)の仕業です。鵙は捕らえた獲物を木の枝等に突き刺したり、木の枝股に挟む習性があります。初めての獲物を生け贄として奉げたという言い伝えから「鵙の早贄」あるいは「鵙の贄」などといわれます(下の写真)。
 
(1)餌の少ない冬季の保存食にする、(2)食べ易いように固定する(フォークの代わり)、(3)空腹でないのに捕らえたのでとりあえず突き刺しておくなど、この習性の機能については複数の仮説が存在しますが、その多くが未検証のままのようです。
 
2019年5月、大阪市立大学と北海道大学の共同研究により、早贄の消費が多かったオスほど繁殖期の歌の質が高まり、つがい相手を獲得しやすくなることが明らかになったそうです。
 
これは、モズのオスのはやにえが「配偶者獲得で重要な歌の魅力を高める栄養食」として機能していることを示している(出典:モズ − ウィキペディア)ということですから、面白いです。
 
俳句では、秋の季語とされ、多くの句が詠まれています。生贄にされた生き物は可哀そうですが、これも生物界の摂理のなせる仕業ということでしょう。そうした観点から詠まれた句が多いようです。
 
  いま沈む日輪を刺し鵙の贄    星野衣子
  鵙の贄かくも光りて忘らるる   熊谷静石
  まなうらのしんと冷えたる鵙の贄 岡林英子
  天刑は天のわがまま鵙の贄    亀田虎童子
  容赦無き青空となり鵙の贄    矢島渚男
  殉教のやうに舌出し鵙の贄    伊藤白潮
  言はず語らずの掟や鵙の贄    長田 等
  言ふまいぞ長谷観音の鵙の贄   鈴木鷹夫
  鵙の贄この静けさは神代より   松本 旭
  枳殻に鵙の手仕事鵙の贄     高澤良一
 
鵙の早贄
鵙の早贄
鵙の早贄
(撮影日:2021.1.30、 鹿児島県さつま町内で撮影)
 

  2021.02.03
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