コラム | ・最近の作句から 〜 黄砂ほか |
− 最近の作句から 〜 黄砂ほか −
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昭和30年代(1955年代)の小学校低学年の頃、集落の入口にあった小さな精米所のお兄さん(専門学校生か大学生だったのだろう)は、線が複雑に描き込まれた配線図とにらめっこしながら、真空管式ラジオを組み立てていた。 バリコンという変な格好をしたものを回すと人の話し声が聞こえ出す。すごいなと思った。バリコンは、バリアブル・コンデンサー(variable condenser)の略で、静電容量が変えられるコンデンサーのことである。 扇形の電極対の一方を回転することによって電極対向面積を変える構造になっており、ラジオの同調(選局)に用いられた。真空管式ラジオは新しい情報の収集源であり、娯楽手段であったが、よく雑音を拾い、朝鮮半島の放送も拾った。 モンゴルや中国北部の砂漠地帯から、おもに関西や九州地方にやってきて、空をどんよりと黄色っぽく霞ませる黄砂は、春の風物詩として季語になっている。ラジオが拾う雑音のザラザラした音と黄砂のザラザラ感を重ねてみた。 バリコンの拾ふ雑音黄砂降る 大津絵(おおつえ)という民画がある。滋賀県大津市で江戸時代初期から名産とされてきた民俗絵画で、さまざまな画題が扱われており、東海道を旅する旅人たちの間の土産物や護符として知られた。 神仏や人物、動物がユーモラスなタッチで描かれているのが特徴で、道歌(仏教や心学の精神をよんだ教訓の歌)が添えられている。剽(ひょう)げるとは、ひょうきんなことを言ったりしたりすること。 剽げたる鬼の民画や水温む シラス台地とは、鹿児島県と宮崎県南部に広く分布する火山噴出物の堆積した台地のこと。そのやせた土地は昔から農耕上不毛の土壌とされてき、やっとカンショ(さつまいも)の栽培が導入されるに至った。 しかし、シラス層を通り抜けてくる水の質は非常に優れいるといわれる。シラスの山の麓に暮らす人々は、清浄な湧水の恩恵を受けてきた。おいしい焼酎がつくれるのも清浄な水のお蔭である。そんな文化を詠み、シラスの白と芹の緑を対比させた。 芹洗ふシラス台地のもらひ水
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