正岡子規にまつわる面白いエピソードをもう一つ。獺祭(だっさい)といえば、山口県岩国市の旭酒造(株)の著名な日本酒のブランド名が思い浮かびますが、『獺』とはカワウソのことです。
かつて中国において、カワウソは捕らえた魚を並べてから食べる習性があり、その様はまるで祭祀を行い、天に供物を捧げる時のようであることから『獺祭魚(だっさいぎょ)』=『獺魚を祭る(たつうおをまつる)』という故事が生まれました。
そして、後世、唐代の詩人・李商隠が尊敬する詩人の作品を短冊に書き、左右に並べ散らしながら詩想に耽り、自らを『獺祭魚庵』と号したことから、『書物の散らかる様』という意味が転じました。
満34歳の若さで亡くなった子規は、死を迎えるまでの約7年間を結核を患って過ごしましたが、寝返りも打てないほどの苦痛を麻痺剤で和らげながら、俳句・短歌・随筆を書き続け、病床を訪れた後進の指導をし続けました。
そんな子規は『獺祭書屋主人』という別号を用いたりしています。病臥の枕元に資料を多く置いてカワウソのようだといったわけです。子規の命日の9月19日を糸瓜忌(へちまき)あるいは獺祭忌(だっさいき)といいます。
|
ユーラシアカワウソ(出典:Wikipedia) |
|
清酒・獺祭(出典:旭酒造(株)ホームページ) |
|
正岡子規(出典:Wikipedia) |
|