レポート  ・アール・ヌーヴォーとアール・デコ   
 
アール・ヌーヴォーとアール・デコ
鹿児島県霧島市福山町にある旧田中家別邸は、大正11年(1922年)に建てられた本格的な和風建築ですが、室内の伝統的な意匠はもちろんのこと、直線や曲線を組み合わせた、『アール・デコ調』のモダンなデザインが非常に魅力的な建物です。

『アール・デコ調』に対比されるのが『アール・ヌーヴォー調』です。そこで、この2つの芸術様式について調べてみました。

 §1 アール・ヌーヴォー

アール・ヌーヴォー(フランス語: Art nouveau )とは、ヨーロッパを中心に広まった新芸術運動で、Art (芸術)+ Nouveau(新しい)で、「新しい芸術」という意味を持ちます。

18世紀半ばから19世紀にかけて起こった一連の産業の変革、いわゆる産業革命により、安価で粗悪な大量生産品が出回った反動として、人々は芸術性や独自性の高いモノを求めるようになりました。

そこで、花や植物などの有機的なモチーフや自由曲線の組み合わせによる従来の様式にとらわれない装飾性を施したり、鉄やガラスなど当時の新素材を利用したりして、『新しい芸術』を生み出そうとする芸術運動がヨーロッパを中心に開花しました。

これが『アール・ヌーヴォー』で、その分野としては建築、工芸品、グラフィックデザインなど多岐にわたりました。

 アール・ヌーヴォーの作品
(出典:アール・ヌーヴォー - Wikipedia)

 §2 アール・デコ

アール・デコ(仏: Art Deco)とは、アール・ヌーヴォーの時代に続き、ヨーロッパやニューヨークを中心に1910年代半ばから1930年代にかけて流行した芸術様式で、その原義は、Art (芸術)+Deco(装飾)で、「装飾美術」という意味を持ちます。

第一世界大戦(1914年〜1918年)が勃発すると、大衆は低コストなデザインの大量生産品を求め始めました。高い装飾性ゆえ大量生産に向かないアールヌーボーは否定され、芸術やデザインは特権階級のものから、大衆のものへと移行していきました。

戦前の価値観は見直され、機能的でシンプルなデザインが求められるようになりました。これが『アール・デコ』で、幾何学図形をモチーフにした記号的表現や、原色による対比表現などの特徴を持ちます。

 マイアミ・デコとも言われるマイアミ(アメリカ・フロリダ州)の風景
(出典:マイアミ - Wikipedia)
アール・デコ様式のイラストレーションで知られるフランスの
ジョルジュ・バルビエ(1882〜1932年)の作品。(出典: Wikipedia)
 日本を代表するアール・デコ調の建物(左:東京都庭園美術館、
右:山の上ホテル本館) (出典: Wikipedia)

§3 まとめ(両者の比較)


アール・ヌーヴォー アール・デコ

デザイン:曲線的
モチーフ:花や植物などの有機物
イメージ:エレガントで装飾的
流行時期:19世紀末〜20世紀初期
中 心 地:ヨーロッパ
デザイン:直線的
モチーフ:幾何学模様
イメージ:機能的・合理的、低い装飾性
流行時期:1910年〜1940年頃
中 心 地:ヨーロッパ、ニューヨーク



【参考にしたサイト】
(1)「アールヌーボー」と「アールデコ」の違いって何?
(2)アール・ヌーヴォー - Wikipedia
(3)アール・デコ - Wikipedia


  2022.07.20
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