雑感  ・愛国心について   
− 愛国心について −
第48回外国人による日本語弁論大会が、 2007年5月26日、大阪府泉佐野市で開催され、28の国と地域、111名の応募の中から選ばれた、9カ国12名が出場し、外国人から見たニッポンのいろいろな側面についてユニークなスピーチが行なわれました。その模様が、 6月17日(日)のNHK教育のETV特集(22:00〜23:30)で放映され、面白いでした。
 
キルギス共和国から筑波大学に留学中のバティールベック・アルムクロフさん(24歳、男性)のスピーチは、『愛国心について』と題するものでした。
 
キルギス共和国は、1991年に旧ソ連から独立した国で、いま人材育成に力を入れているそうです。日本の経済発展に学ぼうと留学してきたバティールベックさんは、国のために必ず何かをしなければならないと考えていました。
 
バティールベックさんが日本のことを初めて知ったのは中学生のときでした。日本は先進国の一つで、日本人は勤勉で礼儀正しいと想像していました。そして、日本の先進国であることの一番目の理由は、日本人は愛国心が強いからだと思っていました。
 
しかし、日本でいま愛国心が問題になっていることを知りました。そこで、愛国心について、日本人に直接、聞いてみることにしました。そうすると、ほとんどの人が、『日本は好きだが、自分は愛国心が強くない』といいます。
 
また、『今の若者は愛国心について全く考えていない。日本に対して何か事をおこす国があったら愛国心が生まれてくるかも知れないが』とか、『愛国心というと第二次世界大戦のときを思い浮かべる。その当時の愛国心はいいものであったとはいえない』という人もいました。
 
バティールベックさんは、日本人の愛国心とキルギス人の愛国心が違うことに気づきます。バティールベックさんは、キルギスは国民の80%が貧しいので、国を発展させ、キルギス人の暮らしを豊かにするために一番必要なものが愛国心だと思っています。
 
そして、もう一つ重要なことがわかってきたといいます。『国のために特別なことをしなくても、自分自身の夢を実現するための努力をすれば、それが自分の国のために役立つ。そして、それが自分にとって愛国心ではないか』と考えるようになりました。
 
そして、『日本では、教師は教師として、医者は医者として、会社員は会社員として、皆が自分の義務を果たしているので日本は国が進歩した。日本人にとって、それは普通のことだが、それも愛国心ではないだろうか。なぜかというと、自分のために働きながら国を発展させることが一番大切なことだと思うから』と述べ、スピーチを結びました。
 
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2007年2月1日、中央教育審議会会長に劇作家・評論家の山崎正和氏(1934年生まれ)が就任しました。山崎正和氏といえば、2002年のサッカー・ワールドカップに関する『超民族性こそ身上 − 日本的カッコよさ』と題する氏の論評を思い出します。要約すると次のようでした。
 
競技場は、日の丸と必勝の文字を記した鉢巻きを締め、ニッポン!ニッポン!と叫ぶ数万の応援団で埋まっていた。一見、日本民族主義の高揚を感じるかもしれない光景だったが、よく見れば、大半が髪を茶色やオレンジ色に染め、鉢巻きの下にはピアスを光らせている若い観客たちであった。彼らはスペイン語で、オーレ "Ole"と声を揃え、他の試合では、街で売られている各国チームのジャージーを着て、ひいきの外国チームを応援していたのである。
 
米外交専門誌『フォーリン・ポリシー』に、『日本の国民総クール(カッコよさ)』と題する論文を書いたダグラス・マッグレイ氏は、この非民族主義的な日本の傾向に将来の希望を見ているのである。
 
山崎氏は、また、2007年 1月21日の読売新聞に『愛すべき現在の日本』と題して、次のような趣旨のエッセイを書いています。
 
愛されるのは、たとえば『和の心』や『日本的協調』ではなく、比較的犯罪が少なく、納税意識が高く、衛生や交通の秩序が守られている現在の日本であるべきなのである。教師が愛国心を生徒たちに教えることには困難があり、もっぱら客観的な順法精神の涵養(かんよう)に徹するべきである。そして、愛国心はまず思いきった国語教育の充実に徹するべきだろう。
 
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自分の国が、平和で安全で、希望の持てる国であって欲しいという願いは万人共通の願いでしょう。そんな自分の国で働き、自分の夢を実現したい。そして、それが結果的に国を発展させ豊かにすることにほかならない。そうした自分への思いと自国への思いがあれば、それ以上、それ以下の愛国心を必要としない国であって欲しいし、国際社会であって欲しいと思います
 

  2007.06.27 
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