俳句コラム  ・奪衣婆(だつえば)
 
− 奪衣婆(だつえば)

   奪衣婆や彼の川に溽暑ありなむ

上の句は、南日本新聞の読者文芸欄・南日俳壇に投句し、堀田季何先生の選を頂いた句です。奪衣婆(だつえば)とは、仏教における冥土の三途の川のほとりにいて、亡者の衣服を剥ぎ取る老婆の鬼のことです。剥ぎ取った衣服は、同じく三途の川のほとりにいる懸衣翁(けんえおう)という翁に渡され、懸衣翁がそれを衣領樹(えりょうじゅ)という木に掛けます。そのときの、その枝のしなり具合によって亡者の罪の重さを量るとされています。

一方、夏(晩夏)の季語である溽暑(じょくしょ)は、梅雨明け後の蒸し暑さを表すことばで、陰暦の6月(現在の7月頃)の異称としても使われます。すなわち、奪衣婆がいるという彼(か)の川すなわち三途の川も蒸し暑いことであろうよ、という句意になりますが、最高気温が40℃に迫ろうかという、この世の異常な暑さを三途の川の蒸し暑さになぞられて詠っているわけです。

奪衣婆(大分県中津市・圓龍寺)出典:奪衣婆 − Wikipedia

  2025.07.29
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