南九州には、その年の
五穀豊穣を祈願する農耕の春祭りである、いわゆる予祝の田遊び神事が
広く分布しています。 |
いずれの祭りも、神社の境内や広場を田んぼに見立て、
作り物の牛を使ったり、あるいは人間が牛に扮して、田打ちから代掻き、種まきあるいは田植えまでの
ストーリーをユーモラスに演じる、という共通点があります。 |
鹿児島県薩摩半島、吹上浜の北端に位置する
いちき串木野市の、東シナ海を望む串木野新港の高台に、彦火火出見命と菅原道真公を
御祭神とする深田神社があります。 |
その神社で、毎年旧暦2月2日
(近年ではこれに近い日曜日)に行われる予祝祭は『ガウンガウン祭り』と呼ばれ、
県指定無形文化財に指定されています。 |
”ガウン(ぐわおん)”とは、『願』あるいは『くわ』がなまったことに由来するそうです。 |
境内を田んぼに見立て、
田打ちから代掻き、田植えまでのストーリーを、滑稽に演じる
野外田園劇です。 |
テチョと弥ばれるオヤジと
その息子の太郎、次郎、牛に扮した男の4人が登場人物ですが、途中、
カカア(女房)に扮した男も登場して笑いを誘います。 |
それぞれが決った持ち場を
担当しますが、一定したせりふはなく、物語は即興で
繰り広げられていきます。 |
この祭りは、子どもたちが
主役でもあります。鍬(くわ)に見立てた、その先に枝の引っかかりがある木の棒を持ち、
役者にいたずらをして倒そうとします。 |
役者を倒した回数が
多いほど、豊作になるとされており、子供たちは元気に
かけまわります。 |
テチョの田打ちがすむと、
子供たちも一緒になって休憩です。カカア(テチョの女房)が、お茶やおやつを
天秤棒で担いで登場します。 |
いよいよ太郎、次郎とコッテ牛(雄牛)が
登場して、代掻きですが、牛小屋に牛がいません。あちこち、探し回る太郎と次郎・・・・・。
喧嘩が始まりかねない雰囲気に! |
牛が牛小屋に戻っているという
スタッフの知らせで、牛小屋に戻って牛を引き出す太郎と次郎。
牛は嫌がって出ようとしません。 |
牛小屋からやっと
引っ張り出したコッテ牛(雄牛)は、暴れ牛! 言うことを聞かず、
太郎と次郎は、てこずるばかり。 |
挙句の果ては、
お手上げだと、ばんざいーをする次郎。その隙に、しめたしめたと
逃げ出すコッテ牛! |
暴れ牛は、
観客の前を走り回ります。境内を抜け出して、裏山へ
逃げようともします。 |
やがて、疲れ果てた
コッテ牛(雄牛)は、スタッフになだめられ、
やっと静かになります。 |
やる気になれば、
仕事でも実力を発揮するコッテ牛。なだめ、なだめ、
なんとか代掻きが進みます。 |
代掻きが無事
終ろうとする頃、今度は子供たちが登場してきて、役者に
邪魔をしようとします。 |
あれこれありましたが、
代掻きも無事終わり、太郎と次郎は、コッテ牛を連れて、牛小屋に戻ります。
ご苦労さんでした! |
最後は、松葉を稲の苗に見立てて、
出演した役者が田植えを行います。このあと、祝餅が巻かれて、約1時間半の祭りは、
お開きとなりました。これで、今年の五穀豊穣間違いなし! |
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