機械技術者の自己啓発支援講座(第20回)
機械技術者のための
 
工業力学入門
 □ 回転運動をする剛体の慣性モーメント
機械技術者が日常の業務を進める上で必要となる力学の具体的で実践的な活用方法の習得を目指します。
前回は、角度、角速度、および角加速度について整理し、回転運動の運動方程式を示しました。本号では、回転運動する剛体の慣性モーメントについて考えます。

8.3 剛体の慣性モーメント
 
質量m(kg)の物体を、角加速度α(rad/sec2)で、半径r(m)の円運動をさせる時の円周力f(N)および
トルクt(N・m)は、次式で示されます。
 
 
 
  一方、回転運動の運動方程式は、次式で示されます。
 
        T=Iα     ・・・・・・・・(2)
 
 (4)式と(2)式を比較すると、慣性モーメントI は、次のように表わされることがわかります。
 
 
                    I=mr2
 
                       ここで、 I : 慣性モーメント(kg・m2
                            m : 物体の質量(kg)
                             r : 回転運動の回転半径(m)
 
              
 
それでは、複数の剛体を同時に回転させる場合、慣性モーメントはどうなるでしょうか。下図に示すように、
質量m1、m2、m3、……… の物体を同時に、加速度αで、半径r1、r2、r3、……… の円運動させるときの円周力FとトルクTは、それぞれの剛体の円周力、トルクを加え合わせたものになります。式に表わすと(5)式、(6)式のようになります。式中の記号狽ヘ、シグマと読み、加え合わせた答え(和)を表わします。
 
 
 
したがった、複数の剛体を同時に回転させる場合、慣性モーメントは、(6)式より、次式のようになります。
  
  
〔演習問題〕

【問8.2】図に示すように、直径が80mm、120mm、および50mmの炭素鋼の球を、それぞれ850mm、1500mm、1200mm棒の先端に取り付け、同時に回転させる。慣性モーメントはいくらになりますか。
  但し、炭素鋼の密度γ=7.85×10-6kg/mm3とする。

                 
〔解答〕
球の体積Vは、V=4πR3/3で与えられます。但し、Rは球の半径です。したがって、3つの球の質量m1、m2、m3は、次のようになります。
 
     m1=4π×(40mm)3/3×7.85×10-6kg/mm3 =2.10kg
     m2=4π×(60mm)3/3×7.85×10-6kg/mm3 =7.10kg
     m3=4π×(25mm)3/3×7.85×10-6kg/mm3 =0.51kg
 
  慣性モーメント I =m1r12+m2r22+m3r32 =2.10kg×(0.85m)2+7.10kg×(1.5m)2+0.51kg×(1.2m)2
             =18.23kg・m2
                                                 Ans 18.23kg・m2
 
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