機械技術者の自己啓発支援講座(第19回) | ||
機械技術者のための 工業力学入門 |
□ 回転運動の運動方程式 |
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機械技術者が日常の業務を進める上で必要となる力学の具体的で実践的な活用方法の習得を目指します。 | ||
本章では、先ず、物体を回転させるときの回転のされ易さ、されにくさの度合いを表す『慣性モーメント』について理解します。静止している物体を回転させようとすると加速トルクが必要になり、回転している物体を止めるにはブレーキ(制動)トルクが必要です。慣性モーメントについて理解しその計算方法を習得したあと、加減速トルクの計算方法を習得します。 |
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第8章 回転体の動力学 静止している物体は動き出しにくく、動いている物体は止まりにくい。物体の持っているこの性質を慣性(inertia イナーシャ)といいます。直線運動では、「物体の動き出しにくさ、あるいは止まりにくさの度合は、物体の質量が大きいほど大きい」のです。静止している物体をある加速度で動かすには力が必要であり、動いている物体を止めるにも力(制動力)が必要です。 上述のことを回転運動する物体について述べると、回転運動では、「物体の慣性モーメントが大きいほど、物体は回転し出しにくく、また回転している物体は止まりにくい」ということになります。静止している物体をある加速度(この場合、角加速度という)で回転させるにはトルク(加速トルク)が必要であり、回転している物体を止めるにもトルク(減速トルクあるいは制動トルク)が必要です。 回転する物体の慣性モーメントが無視できない場合には、電動機(モータ)の容量すなわち所要動力(kWあるいは馬力PS)は、負荷トルクに加減速トルクを加えた全トルクから計算する必要があります。 8.1 角速度と角加速度 回転運動の運動方程式を理解するためには、角速度と角加速度について良く理解しておく必要があります。ここで、角度、角速度、角加速度について確認をして置きましょう。 (a)角度 角度は、2本の線分の開き度合いのことで、単位は度(°)とラジアン(rad)があります。日常生活では、度(°)を使いますが、力学や工学では、ラジアン(rad)を用います。180°が、π(パイ)ラジアンです。πは、円周率で、π=3.141592です。度からラジアン、またはラジアンから度への単位変換は、この関係から求めます。角度の記号には、θ(シータ) がよく用いられます。 (b)角速度 一秒間(sec)に進む角度の大きさが、角速度です。単位は、rad/sec で、「ラジアン・パー・セコンド」と読みます。角速度の記号には、ω(オメガ) がよく用いられます。
(c)角加速度 一秒間(sec)当たりの速度(rad/sec)の増減が加速度です。速度を、もう一回時間(sec)で割るので、角加速度の単位は、 rad/sec2 で、「ラジアン・パー・セコンド二乗」と読みます。 8.2 回転運動の運動方程式 直線運動の運動方程式は、式(1)に示すように、力F(N)は、質量m(kg)と加速度a(m/sec2)の積(掛け算)で与えられます。 回転運動の方程式も、式(2)に示すように、直線運動の方程式と同じ形をしています。すなわち、トルクT(N・m)は、慣性モーメントI(kg・m2)と角加速度α(rad/sec2)の積(掛け算)で与えられます。この両者の運動方程式の形を頭の中に留め置きましょう。 |
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