機械技術者の自己啓発支援講座(第9回)
機械技術者のための
 
工業力学入門
 □ 仕事と動力(仕事率)
機械技術者が日常の業務を進める上で必要となる力学の具体的で実践的な活用方法の習得を目指します。
私たちは、日常生活で、例えば、仕事に行くとか、仕事が忙しいとか言うように、仕事という言葉を使います。力学で言う機械的な仕事は、それらの仕事の意味と定義が異なります。
 
自分の乗っている車の馬力は、何馬力だとか、台所の蛍光灯の電球は20w(ワット)だとか言います。この馬力やw(ワット)は、機械や蛍光灯が1秒間に行う、あるいは1秒間に消費する仕事(あるいはエネルギーとも言えます)の量を示しています。仕事と動力の定義は、基本的で重要な項目ですので、しっかり習得しましょう。

 
 

第5章 仕事と動力
5.1 仕事
物体に力F(N)を加えて、力の方向に物体をS(m)だけ移動させたときの「仕事L」は、力F(N)と移動距離S(m)の積で表される。1Nの力で、1mだけ移動させた時、1N・m(ニュートンメータ)の仕事をしたという。すなわち、

 
               仕事L(N・m) = 力F(N)×移動距離S(m)
 
                   1N・m = 1N×1m
 

〔備考〕
 1N・mの仕事を、1J(ジュール)ともいう。J(ジュール)は、熱量(熱エネルギ)の単位としても用いられる。
 
 
5.2 動力(仕事率)
単位時間(1秒間)当たりにする仕事の割合を「動力」(Power)あるいは「仕事率」という。1秒間当たりに、1N・mの仕事をする動力(仕事率)を1W(ワット)という。すなわち、

     

 
 
        

【備考】
 重力単位との単位換算
         (仕事量)    1kgf・m=9.81N・m
          (動  力)   1kW=102kgf・m/sec  
 
【備考】
 慣用的に用いられている動力の単位として、PS(仏馬力、略して馬力)がある。
                   1kW=1.36PS  
 
 

〔演習問題〕

【問題5.1】
図のように、フライス盤のテーブルを送りねじで送る場合、切削抵抗その他による軸方向の力を12.5kNとし、テーブルの最大送り速度を1,500mm/min とするときの駆動モータの所用容量(kW)を求めよ。但し、送りねじ及び歯車を含めた駆動系の機械効率を72%とする。
 
      

〔解答〕
  動力(仕事率)は、行った仕事量(Nm)を、要した時間(sec)で割った値である。このテーブルは、12.5kNの力に逆らって、1分間に1.5m進むので、
 
     1分間に行う仕事量=力(N)×移動距離(m)
                  =12,500N×1.5m=18,750Nm
 
     従って、動力(仕事率)=1分間に行う仕事量/60sec
                   =18,750Nm/60sec=312.5W
                   =0.3125kW
     
 モータの出力をXkWとすると、その72%がテーブルを動かす動力として働き、残りの28%の動力は、駆動系の
摩擦熱となって空中に放散される。よって、
                    0.72X=0.3125kW
                       X=0.3125kW/0.72
                        =0.434kW
                                                   Ans 0.434kW
 
【備考】
 実際は、計算で求められた値に安全率(例えば2〜3)をかけて、標準品として市販されているモータを
手配する。
 
  
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