機械技術者の自己啓発支援講座(第6回)
機械技術者のための
 
工業力学入門
 □ モーメントとトルク
機械技術者が日常の業務を進める上で必要となる力学の、具体的で実践的な活用方法の習得を目指します。
物体を回転させようとする力の働きを『モーメント』あるいは『トルク』と言います。そう難しい事項ではありませんが、機械技術では日常的に使うとても基本的で重要な事項です。演習問題を通して理解を深めましょう。
 

第3章 モーメント
3.1 モーメントの定義

 ハンドルを回すときや、スパナでボルト・ナットをしめるときには、力を加える点が回転の中心から遠い方が、より小さな力で作業できることはよく知られている。物体を回転させようとする力の働きを、力の『モーメントM』といい、下記の式で示される。
 
 
                    
 

 
                                 M :モーメント(N・m) 
                        M=F×r    F  :力(N)
                                 r  :モーメントの腕の長さ(m)
 


上図に示すように、モーメントの腕は、回転中心から力Fの作用線に垂直におろした線である。モーメントの符号は、上図の場合、時計回りのモーメントを正(+)と約束している(どちらに約束してもかまわない)。
 
 
3.2 モーメントの合成・分解
 
                     
 
 
                                  F・r=Fx・a + Fy・b

 
 
3.3 トルクについて
 モーメントは、力の回転運動をさせる能力を示すもので、工学では、軸の回転の場合のようにモーメントのことを「トルク」T(N・m)とも呼ぶ。


〔演習問題〕

【問題3.1】
 図のようにベルト車の2本のベルトの張力がそれぞれ、T1=20N、T2=15N、T3=30N、T4=25Nであるとき、軸の中心O回りの合モーメントを求めよ。
 
                     
 
 
【問題3.2】
 下図のように、スパナでねじを締める。ねじ中心からスパナのグリップ中心までの長さa=300mmである。
(1)グリップ部にP=150Nの力を加えてねじを締めつけるときの締めつけトルクはいくらか。
(2)72Nmのトルクでねじを締めつけるためには、グリップ部にいくらの力を加えたら良いか。
 
                       
 

〔解答〕
【問題3.1】
まず、モーメントの符号を設定します。時計回り(右回り)のモーメントを正(+)とします。
 
 合モーメント=T1×D1/2 − T2×D1/2 − T3×D2/2 + T4×D2/2
         =20(N)×1(m)−15(N)×1(m)−30(N)×0.5(m)+25(N)×0.5(m)
         =2.5(Nm)  答えの符号が正(+)だから時計回りのモーメント
                                              Ans 2.5(Nm)、時計回り
 
 
【問題3.2】
(1) トルクT=力P(N)×トルクアームの長さa(mm)=150(N)×300(mm)=45000(Nmm)=45(Nm)
(2) 力P(N)=トルクT(Nmm)/トルクアームの長さa(mm)=72×1000(Nmm)/300(mm)=240(N)
 
                                              Ans (1) 45(Nm)、 (2)240(N) 
 
 
 
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