機械技術者の自己啓発支援講座(第1回)
  機械技術者のための
 
  工業力学入門
 □ 速度と加速度
 □ 質量
機械技術者が日常の業務を進める上で必要となる力学の具体的で実践的な活用方法の習得を目指します。

 次回号で詳しく述べますが、「力=質量×加速度」 です。従って、まず基本的な事項として、「加速度」 「質量」について確認しておきます。
 
【速度と加速度
 速度、加速度は、日常的に馴染んでいる言葉であり、そう難しいことではありませんが、 1時間(h)当たり、1分間(min)当たり、および1秒間(sec)当たりの単位換算が難なく できることが必要です。基本になるのは、1秒間(sec)当たりの速度、加速度( m/sec、m/sec2)で、それぞれ 、「メートル・パー・セコンド」「メートル・パー・セコンド二乗(じじょう)」と読みます。
 
【質量】
  質量も基本的な事項です。質量の単位は、「kg」ですが、 質量は、「重さ(重量)ではない」ことを肝に銘じて下さい!

 
第1章 力の定義
1.1 速度と加速度
(1)速度

単位時間(1秒間)当たりに進む距離(m)が「速度」(m/sec)である。

 

備考〕
1分間(1min)あるいは1時間(1h)当たりに進む距離で速度を表わすと
            ・秒速 1m/sec=60m/min=3600m/h
            ・分速 1m/min
            ・時速 1m/h

( 2)加速度
単位時間(1秒間)当たりに速度がどのぐらい変化するかを表わすのが「加速度」(m/sec2 )である



備考〕
・アクセルを踏んで自動車の速度を上げることを「加速する」といい、ブレーキをかけて速度を 下げることを「減速する」という。力学では、減速も含めて加速とよぶ。但し、減速では、その値を−(マイナス、負)として扱う。
 
・上の二つの式は、厳密には等速度及び等加速度運動のときに成り立つ。 等速度または等加速度でない場合はいずれも平均値を示す値になる。
 

  〔演習問題〕
【問題1.1】  30mを4秒で進む物体の速度を、秒速(m/sec)、分速(m/min)および時速(km/h)で求めなさい。                                                         → <解答>
 

1.2 質量
 「質量」(mass)とは、物体そのものを構成する物質の分量を表わす。初めは「4℃における、 たて10cm×よこ10cm×高さ10cmの水のかさ(質量)を1kg(キログラム)」と定義していたが、 1889年に直径、高さとも39mmの円柱形で、白金90%,イリジウム10%の合金でできている 「国際キログラム原器の質量」に置き換えられた。
 
質量は、いかなる空間においても、その大きさは変化しないものと定義されている。 たとえば、質量が60kgであれば、地球上はむろん宇宙空間においてもその質量は60kgである。
 
〔質量の計算の仕方〕
 質量m(kg)は、物体の体積V(m3、あるいはmm3)に、 その物体の材料の密度γ(kg/m3 、あるいはkg/mm3)をかけて計算します。すなわち、
 

 質量m=体積V×密度γ            (3)

具体的には、
〔直方体〕
 縦、横、高さをそれぞれa、b、cとすれば
 
                  m=abcγ
 
〔中実円柱〕 (中が詰まった円柱)
 外径をd、長さをLとすれば

                  

〔中空円柱〕 (穴の明いた円柱)
 外径をD、内径をd、長さをLとすれば

                  
                                         ( πは円周率で、π=3.141592 )

  
 
〔備考〕 キログラム原器
 日本国キログラム原器の質量は、約30年ごとに国際度量衡局(パリ近郊) が保管する国際キログラム原器と比較されその質量値が確保されている。

備考〕密度
密度とは、単位体積当たりの質量のことである。主な実用材料の密度はおおよそ以下の通りである。
・炭素鋼
         7.85×10 3 kg/m3  (=7.85×10-6  kg/mm3
・銅
          8.9×10 3  kg/m3  (=8.9×10-6  kg/mm3
・黄銅
         8.5×10 3  kg/m3  (=8.5×10-6  kg/mm3
・アルミニウム
      2.7×10 3  kg/m3  (=2.7×10-6  kg/mm3
 (※ 実務で質量を正確に計算する場合には、実際の材料の密度を確認して下さい。)




  〔演習問題〕
【問題1.2】 つぎの物体の質量を求めなさい。
(1)縦125mm、横250mm、高さ45mmのアルミニウムの直方体
(2)外径が85mmで、長さが175mmの炭素鋼の丸棒
(3)外径が120mm、肉厚7.5mm、長さが210mmの銅パイプ                     
→ <解答>



〔解答〕
【問題1.1】

 30m/4sec=7.5m/sec
 =7.5m×60/min=450m/min
 =450m×60/h=27,000m/h=27km/h                Ans 7.5m/sec、450m/min、27km/h


【問題1.2】
(1)125mm×250mm×45mm×2.7×10-6  kg/mm 3 =3.80kg
(2)π/4×(85mm)2×175mm×7.85×10-6  kg/mm3=7.80kg
(3)内径は、120mm−7.5mm×2=105mmだから
  π/4×
{(120mm)2−(105mm)2}×210mm× 8.9×10-6  kg/mm34.95kg


        Ans (1) 3.80kg、(2)7.80kg、(3)4.95kg  (※小数第3位を四捨五入したときの答えです。)


  
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