大量の仮想水を輸入している国
わが国は、自国が水資源に恵まれているため、他国の水資源問題にはほとんど関心を持っていないのではないでしょうか。しかし、私たちは、多量の農産物や製品を輸入する形で実は、海外の水資源に依存した生活を営んでいるのです。
仮想水とは
仮想水(バーチャルウォーター)という言葉をご存知でしょうか? 仮想水とは、農産物や工業製品を生産するのに必要な水の量を示すものです。精米後の米1kgを作るのに約8トン、小麦粉1kgを作るのに4トン以上の水が、また、牛肉は、肉1kgに対して70〜100トンの水が必要であると推定されています。
わが国の仮想水輸入量
日本は、食料自給率がカロリーベースで40%と、先進国では最低となっています。そのため、農作物等の輸入によって1年間に、1,035億トンの仮想水を輸入していると推定されています。内訳は次の通りです(データは参考文献[1]から引用)。
仮想水の国別輸入量 輸入仮想水の輸入品別シェア -------------------------
------------------------- アメリカ 596億トン 牛肉 45.3% オーストラリア
256億トン 小麦 18.6% カナダ 54億トン 大豆 16.0% ブラジル 27億トン
とうもろこし 12.4% 中国 15億トン 豚肉
4.3% オランダ 10億トン その他 3.4% 東南アジア
5億トン ------------------------ その他 72億トン 合計
100% ------------------------- 合計
1,035億トン
人一人が一日生活するのに、最低30リットルの生活用水が必要だと言われています。トイレを1回流すと約10リットルの水を使うので、その3倍の量です。地球上の約8割の人は、この量以下の水で生活しているのに対して、私たち日本人はその約70倍に当たる2,000リットル(2トン)の水を1人が1日に消費していると言われています。この量は、アメリカについで世界第2位です。
これで計算すると、日本の年間の生活用水の総消費量は約890億トンですから、その1.15倍の仮想水を輸入していることになります。生活用水と仮想水の量を合わせると、私たちは年間1,925億トンの水を消費しています。1人1日当たり4,300リットルの消費量であり、私たちは、最低必要量の実に140倍の水を消費しているのです。
世界の水問題に目を向けて
今後、人口の増加、食料の増産、途上国の工業化などで水の需要はさらに急増すると考えられます。一方、地球温暖化による影響や環境汚染などによって、利用できる水が減っていくと考えられています。私たちは、多量の他国の水を消費しながら生活しているという自覚を持ち、世界の水問題に目を向けることが求められています。
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