レポート | ・バイオエタノール 〜 風が吹けば桶屋が |
− バイオエタノール 〜 風が吹けば桶屋が −
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わが国でもバイオガソリンの使用が始まりました。4月27日から首都圏の50箇所のガソリンスタンドで試験販売が開始され、2010年度までには全国のガソリンスタンドで販売される計画です。 バイオガソリンは、植物原料のバイオエタノールから合成した『ETBE』と呼ばれる物質を7%の割合でガソリンに混ぜたもので、性能は一般のガソリンと変わらず、価格もレギュラーガソリンと同水準で販売が始まりました。 エタノールは、エチルアルコールすなわち、お酒のことですが、近年自動車燃料として注目を集めています。サトウキビや大麦、トウモロコシ、大豆などの植物資源からグルコースなどを発酵させて作られたエタノールのことを『バイオエタノール』と呼び、化石燃料(天然ガスや石油など)から作られる合成エタノールと区別しています。 元々、緑色植物は光合成を行なうときに、大気中の二酸化炭素を吸収していますからバイオエタノールを燃やして二酸化炭素が発生しても、大気中の二酸化炭素の収支はプラスマイナスゼロとなる(この考え方をカーボンニュートラルといいます)ので、二酸化炭素の増減に影響を与えないと見なされます。 平成9年(1997年)に締結された国際条約『京都議定書』で、日本は、第一約束期間(2008〜2012年)に、二酸化炭素の排出量を1990年との対比で6%削減するこになっていて、その目標達成に石油業界として協力するため、今回のバイオガソリンの販売となりました。 このように、急速に注目を集めているバイオエタノールですが、その先進国は何といってもブラジルです。世界一のサトウキビの産地であるブラジルは、1970年代の石油危機のときからサトウキビを原料としたバイオエタノールの利用を国の政策として進めてき、現在世界のバイオエタノールの全生産量のおよそ3分の1を生産しています。 *** さて、バイオガソリン初出荷のニュースが報道された同じ頃、 『100%果汁ジュース、一斉に値上げへ』という報道がありました。飲料各社は、紙パック入り果汁 100%のオレンジジュースやグレープフルーツジュースを5月から1割程度値上げするというのです。 米国フロリダのオレンジ産地がハリケーン被害を受けたことと、世界的に需要が急増しているバイオエタノールの原料となるサトウキビ栽培の方が儲かるということで、ブラジルでオレンジからサトウキビへの転作が進んだ結果、オレンジが品薄となり、価格が高騰しているというのです。まさしく、『風が吹けば桶屋が儲かる』で、思わぬ所に思わぬ影響が出ているわけです。 それどころか、サトウキビや麦、トウモロコシ、大豆などの、バイオエタノール原料への転用は、将来世界的な食料不足を生むのではないかと危惧されています。現に、米国では近年、バイオエタノール生産のためのトウモロコシ消費が急増し(2006年度には、全生産量の20%近くがバイオエタノール生産に使用)、トウモロコシ価格の高騰が、食品産業や畜産業(飼料)に打撃を与えているといわれます。 世界第2位の石油消費国で 6,000万台の自動車を保有するわが国のバイオエタノール事情はどうかと言えば、ブラジルなどからの輸入だけに頼らざるを得ない不安定な状況にあります。今回発売が開始されたバイオガソリンに使用されている『ETBE』も、フランスからの輸入のもので、小麦から作られたそうです。 ただ、アサヒビールが沖縄県の伊江島で、九州沖縄農業研究センターと共同で安価な国産のバイオエタノールをつくる実験を始めています。従来の2倍以上の収穫ができるサトウキビを新しく開発し、砂糖の生産量を確保しつつ、バイオエタノールもつくれる技術を開発中ということですから、大いに期待したいです。 【参考】 このレポートは、下記のサイトを参考にして書きました。 ・石油連盟|石油とエコ|バイオガソリンについて ・日経スペシャル ガイアの夜明け ・アサヒビール 研究成果レポート ・U.S. Corn Production and Use for Fuel Ethanol and for Export, 1980-2006 |
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2007.05.02 |
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